神が遊んだ不完全な世界

田所舎人

主人公(仮)とギルド

圭介達は食事を終え、飯屋『ネリウスの加護』を出る。ユニ曰く、店主のカドムは乳製品アレルギーのためにシチューの味見ができない。故に不味いそうだ。圭介がユニに「そんな人が飯屋なんて運営できるんですか?」と疑問を投げかけるとユニは
「カドムにも事情があるんだよ」
 と意味深に答えた。何か事情があるようだ。ちなみに普通の料理は美味しい。ユニが注文した料理を圭介は少し食べさせてもらった。少し大胆で濃い味付けだが『ネリウスの加護』を利用する客の大半は男性で、むしろ、その味付けに満足している様子だ。
「さてと、この時間でもまだギルドは開いてるはずだったが、行ってみるか?」
「はい!」
圭介はユニの後を追うように小走りになる。飯屋『ネリウスの加護』より更に街の中心部へと進むと騒がしい一つの大きな建物が見えてくる。
「ここがこの街のギルド、『ノギスの壷』だ」
 そうユニが圭介に紹介した建物は高さ八メートルを超え、他の建物より二回りほど大きい木造建造物だ。表札には壷のような模様が彫られている。中からは灯りが漏れ、笑い声や、罵声が飛んでいる。その中にユニは歩を進め、圭介もそれに続く。
 ユニが店内に入ると先程までの笑い声や罵声は止み、静まり返る。店内の客達はユニの顔を見ると、
「おお、ユニじゃねぇか!」「おお、ユニさん!」「ライルさん! ユニさんがきましたよー!」
 と、歓迎モードの様子。皆は口々にユニさん、ユニさんと言っている。ユニは美人で腕も立つ実力者のようで一種のアイドルのような存在なのかもしれない。
「おお、ユニ、よく来たな」
 と、精悍な顔つきに紳士然とした五十代程の筋肉質な男が歩み寄ってくる。
「こんばんわ、ライルさん」
「ああ、こんばんは。そちらは?」
「こいつは野村圭介。今日はこいつのギルド登録を頼みたいんだがいいかい?」
「そうかそうか。では野村さん。コチラにどうぞ」
 と、ライルは圭介を窓口に案内する。
「彼女が受付担当で、私の娘のルルティアだ」
「よろしくお願いします」
 と、丁寧に机越しに頭を下げる少女はルルティアと紹介された。黒く長い髪に三つ編み。前髪は少し目にかかるくらいで可愛らしい丸い目が特徴だ。見た目の年齢は十六程の少女のようで、ライルの娘にしては幼いといった印象だった。
「こう見えても、ルルは22になるんだ」
「もう!お父さん!」
「ハハハ、悪い悪い」
 笑いながら謝るライルと顔を赤くしながら「もう!」と怒るルルティア。そんな姿を客に見られ顔を赤らめた。
 ルルティアはコホンと咳払いをし、居直る。
「ギルドへの登録ということでしたね」
 微笑みかけてくれるルルティアさん。
「あ、はい。お願いします」
 圭介はルルティアの笑顔に少しだけ見惚れてしまう。
「では、いくつか質問があります。答えられないような質問でしたら、無理に答えなくて構いません」
「分かりました」
 そして、ルルティアはカウンターの下から何かを取り出した。
「まず、名前を伺いましょうか」
「野村圭介です」
「野村圭介さんですね。分かりました」
圭介の目にはルルティアが持つ道具が僅かに光ったように写った。
「では次に、ソルバーとワーカーのどちらを希望されますか?」
「なんですか、ソルバーとワーカーって?」
「ああ、そうですよね。それをきちんと説明しないとダメですよね」
 ルルティアは複数枚の紙を閉じたファイルのようなものを取り出した。
「ソルバーはモンスターの討伐や商人の警護、盗賊狩りといった危険が伴う仕事を請け負います。次にワーカーは子守や引越しの手伝いといった危険度の低い仕事を請負います。簡単に区別すると国の外で仕事を遂行するのがソルバー、国の中で仕事を遂行するのがワーカーとなります」
「なるほど。ソルバーは冒険者らしいけど、ワーカーは日雇いのバイトみたいなものか」
「そうですね。基本的には報酬は日給で支給されます」
「そういえば、こんな店って他の国にもあるんですか?」
「ありますよ。例えば、学術研究国家レスリック、不可侵国家ヴィルドン、貿易国家カルトス、異文化国家ササニシキ、信仰国家タユタユ、そしてココ、交易国家ノギスです」
「例えば、ソルバーに所属して、ワーカーの仕事を受けることはできるんですか?」
「可能ですよ。ただし、ソルバーになるには試験を受けていただきます」
「試験ってなんでしょうか?」
 そう尋ねる圭介にルルティアは一枚の紙を見せる。
「このモンスターを倒してもらいます」
 紙には丸い何かが描かれている。
「モンスター?」
「はい。このモンスターの名前はピリス。皮膚がゴムのような弾性体でできており、全身は硬い毛によって覆われています。そして頭頂部には殺傷能力を持つ角を持ち、跳ねるようにして突進してきます。普段は人前に出てもすぐに逃げ出すんですが、発情期は気が荒くなるため見境無く人間を襲うためこの時期は試験として出題されることがよくあります」
「倒した証拠として、ピリスの角を一本持ってきてください。それに見合った報酬もお渡しいたします」
「でも、俺は魔物を倒したことなんてないから・・・どうすればいいか分かりませんよ?」
「圭介、お前はモンスターを倒したことがないのか?」
 後ろからユニさんが突然声をかける。
「国の外に出るような奴だから、魔物と戦ったことぐらいあると思っていたが」
「ないですよ! というよりもケンカだってここ数年やったことないのに」
 圭介が最後にケンカをしたのは三年前、友人とどっちが腕っ節が強いかということでケンカをしたのが最後だ。
「そういえば、キリスさんもココを利用しているんですよね?」
「あ、兄に会ったんですか?」
「え、キリスさんってルルティアさんのお兄さんなんですか?」
 ルルでいいですよ~と手を振るルルティア。
「ええ、兄さんは私の5つ上の兄ですよ」


(ルルさんが二十二だからキリスさんが二十七か。見た目は若く感じるけど、落ち着いてるからそれ以上と思えないくないかな?)


「兄はソルバーとして、うちのギルドの中でも屈指の実力者ですよ。妹として、兄を誇りに思います」
 そう言って、はにかむルルティア。その笑顔がキリスと重なって、兄妹だなと思った。
「キリスさんはどんな依頼を受けてるんですか?」
「兄さんは色々なクエストを請負いますが、護衛やモンスター退治などが多いですね」
「じゃあ、俺もキリスさんに負けないような立派なソルバーになってみせますよ!」
「はい! がんばってください」
 圭介はそう言って、ピリスが書かれた紙を受け取り仮登録を終わらせる。
(明日はピリス退治のための準備をしなくては!)



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