異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第7節

 俺の返事を聞いた山口さんはにっこりと笑い、安心したような表情を浮かべた。
 そして、狙ったかのように電子音が鳴り響く。それは山口さんの電話のようで、山口さんはごめんなさいと言いながら電話を手にして部屋を出た。

「ふぅ……」

 いつの間にか緊張していたのか、溜息をついて体を弛緩させた。

「あの人が気になるの?」

「え?」

 シルヴィが突然訊いてきた。それがどういう意味なのか図りかねた。

「大人の女性だからかしら? 胸も大きいようだし」

 胸という単語でついシルヴィの胸元を見てしまう。確かにシルヴィのそれよりは山口さんの胸が豊満だ。ただし、俺の持論としては胸に貴賤は無い。

「いや、そういうわけじゃないんだけどさ……。なんか上手く言えないんだよな」

 美人ではあるし、言い寄られればその気にはなるかもしれないが、そういう感情、女性に対する好意と名付けるにはこの感情は微妙に違う。好意的な物であるには違いないが、恋愛感情とも微妙に違う。ボタンを掛け違えているような、形は合っているのに遠目から見れば違和感を覚える。そんな感情。

「そう。まぁ……貴方の趣味は色々と広いものね」

「……まさか、俺に能力を使ったのか?」

「そんなことをしなくても分かるわ。数日とはいえ貴方と同じ屋根の下にいたんですもの。一人暮らしの癖が抜けてないのか、本棚に堂々と並べられていたわ」

「……オーケー。この話は無しにしよう」

 本棚に並べられた漫画やラノベ、家庭用ゲーム機のパッケージ、それらと肩を並べるエロゲのパッケージ。確かにジャンルは幅広い。

「あら、気に障ったのならごめんなさい。ただ、私のような幼児体型でも女性として見てくれているんだなって、そう思ったわ」

 シルヴィは意地悪そうな笑みを浮かべて俺を詰る。

「言ってろ……」

 シルヴィが言うように、俺の広いストライクゾーンの中でもシルヴィはかなり中心に寄っている。小柄で綺麗であり、知的な会話ができ、料理の腕からも家庭的な側面が伺える。こうやって並べると、確かに俺好みの属性が多い。ただし、手を出そうとは思わない。

 俺が机に突っ伏してシルヴィの顔を見上げていると、山口さんが戻ってきた。

「すみません。どうも高宮班長が急な呼び出しを受けて出かけることになったみたいなの」

「高宮班長が?」

 呼びつけた本人が急に席を外す事になるなんて普通なら失礼なんだろうが。

「今後の高宮班長からの指示は私を通じて渡されるらしいの。それで、最初の指示なんだけれど貴方達に新しい住居を紹介する必要があるんだけれど、大丈夫かしら?」

「俺は大丈夫だけど、猫やブラッドさんは?」

「猫さんは高宮班長に同行することになったわ。ブラッドさんは本部に掛け合いたいことがあるからともう少し滞在するらしいわね。帰りは自力でどうにかするって言ってるらしいから気にしなくていいそうよ」

「そっか。なら、いいか」

 俺とシルヴィは腰を上げ、山口さんに先導される形で部屋を出た。

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コメント

  • 月

    えーと、 奴隷ですよね……ちょっとウザイかなー

    0
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