異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第5節

 配られたお茶を飲みながら先程の説明を反芻する。
 待遇に関しては間違いなく良いし、俺の向こうでの立場を鑑みて配慮もしてくれている。それに、魔石の売却に関しても好意的だ。まぁそこらへんはいくらかアマテラスが中抜きしていてメリットがあるかもしれないから、共栄関係ってところだろう。
 俺とクロちゃんについての扱いは分かったが、そうなると高宮がシルヴィをどう扱うか分からない。

「ポリグラフの扱いはどうなるんだ?」

「……ポリグラフさんはこのままニーサンの下に付いていただくことになります。報告書通りならば、彼女は貴方の命令なら何でも従うとありましたから」

 俺の能力のうち、かなりの部分が筒抜けになってるわけか。でも、その命令の範疇がまさか身体を操るどころか、感情にまで干渉するとは知られていないだろう。
 とりあえず、俺とシルヴィが引き剥がされることは無いようだ。

「なら、俺とシルヴィは今まで通りか。猫はどうなんだ?」

「彼女も今まで通り、ニーサンの相棒として行動していただきますよ。あちらの世界とこちらの世界も含めてですね」

 高宮はあちらの世界を宝の山と称した以上、情報が欲しいのは間違いないだろう。何かの小説で読んだことがあるが、未開の地で手つかずの資源があり、その土地の人間がその価値を理解していない場合、安価にその資源を手に入れることができる。
 まぁあくまで俺の考えの範疇で会って、高宮がそこまで考えているかは分からないけれど。

 このタイミングでドアがノックされる。高宮が入室を促すと、スーツを着た女性が失礼しますと断り、高宮に用件を伝えた。どうやら、研究部門の班長が時間を作って別室で待機しているとのこと。どのタイミングでもいいから、来れないかということらしい。

「では、大方の話も終わりましたのでクロさんは別室へ。猫さんとブラッドさんはもう少しお話良いですか?」

「ん? 俺とポリグラフはここで待機?」

「すみませんが、少しこの部屋でくつろいでいてください。後で人を寄こしますので。何か聞きたいことがありましたら、後程お聞きしますのでお許しください」

 そういって高宮はクロ、猫、ブラッドを連れて退出した。その時、クロがなんとなく名残惜しそうにこっちを見て頭を下げたのは少し印象的だった。

「皆、行っちゃったな。……ンー」

 背もたれに背を預け、思いっきり伸びをする。

「はぁ……これから先、ずっとあんたのおまけとして生きていくのかしら……」

 シルヴィが日本語ではない言語でそんなことを言った。もちろん、俺はその意味は分かる。

「何か不満な事がある?」

 それに対し、俺は日本語で答えた。

「何も不満が無いと思っていたの?」

「……悪い」

 伸びをした姿勢のまま天井を見上げて謝った。
 結局、アマテラスから見てのシルヴィはシルヴィ自身が言った通り、俺のオマケとして見られているんだろう。そして、俺がシルヴィを解放しない限り、ずっとこの関係は続く。
 少し暗い雰囲気になったところで、またしてもドアをノックする音。

「どうぞー」

 伸びをしていた姿勢を正し、入室を促した。

「失礼します」

 そう言って入ってきたのは少し驚くぐらい美人な女性だった。高宮と同様に白衣を着ており、研究開発局の職員であろうことは察しが付く。

「初めまして。黒の剣士さんとポリグラフさん。私は山口といいます」

 そう言って笑いかけてきた人物に少なからず目を奪われた。
 暗褐色で艶のある髪が胸元で緩やかに内巻きにカールしており、顔立ちは丸顔の可愛い系ではなく、やや面長な綺麗系。温和そうな印象を受ける。そして特に目を引くのはその胸元だ。羽織った白衣を押し出すその胸はスレンダーな体型と相まって尚更大きく見えた。年齢は二十代後半から三十代前半だろうか。間違いなく俺よりは年上だろう。
 向こうの世界でも同じぐらいの美人は見たことがあるし、綺麗さだけで言えば他国の姫達の方が綺麗かもしれない。それでも、不思議とこの山口という人物から目が離せなかった。

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