異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第2節

 ゲートをくぐり、俺とククに割り当てられた待機室に降り立つ。俺の私物はあまり持ち込んでいないため、机の上に乱雑に広げられている文房具や菓子の類は全てククのものだろう。
 扉は開きっぱなしのため、ククも事務所にいるらしい。

「お久しぶりです」

 前まではこの能力がバレないよう部屋の外にゲートを用意していたが、水城にバレてからはゲートをこっちに移していた。それでも、俺が急に現れたことに水樹とクロちゃん意外は驚いていた。

「ご無沙汰していました」

 結局、あの騒動のあとにこっちに顔は出していない。急遽与えられた休暇をそのまま向こうの世界で費やしていたからだ。故に、ファットやクク、それにブラッドと顔を合わせるのは久しぶりだったりする。
 メンバー全員が席に付き、それぞれ自由に過ごしていたらしく、それぞれがスマホを手にしていたり、新聞を手にしていたり、お菓子を手にしていたりする。

「お久しぶり、ニーサン」

 ファットはいつも通りスナック菓子を食べながら俺を迎えてくれた。

「本当にニーサンって好きな所に移動できるんだ」

 ククは好奇心に目を輝かせながら俺に近寄ってきた。そのククの頭を少し雑目に撫で回す。

「悪いな。本当の力を話さなくてさ」

 その言葉に反応したのはブラッドだった。

「……いいさ。俺からすればどっちも魔法に違いねぇ。それに、もう一つの方はマジモンの魔法らしいじゃねぇか」

 若干刺のある言い方だが、その通りだ。

「……すみません。隠すつもりはなかった、と言うつもりもありません。できれば隠したかったことですから」

「……ふん。どうせ全部俺の知らねぇところで動いてたんだろ」

「……すみません」

 謝ることしかできない。実際、ブラッドの立場であれば面白くないだろう。だが、俺も俺の立場がある。それでも、隠す必要がなくなった分、俺の気は清々している。

「……謝んな。例の件以降、お前の管理は俺から別の奴に移った。今日はそのための引き継ぎをするだけさ」

「……」

「なにしょげてんだ。お前にとってはいい話だぜ。なにせ、本部所属になるんだ。ナンバーズから一ヶ月経たずにネームド、お前の実力ならランカーだって直ぐにでもなれるんだぜ?」

「ランカー……ですか?」

「ああ、ククやクロがナンバーズ、俺やファットさんがネームドだってのはさすがに覚えてんだろ? ネームドが実績ある千人程度の奴らだとしたら、ランカーは実力がそのまま反映された順位持ちだ」

「……要は格付けですか?」

「そういうこった。順位付けすることによって、能力者達の競争力を高める、なんて体の良い事を言ってるが、実際は対外的な喧伝だろうさ」

「喧伝?」

「外国に対するな。今回、本部がお前に目を付けたのもそこらへんが狙いだろうぜ。なにせ、外国語が話せる能力者ってのは少ないからな。まぁお前のはちょいと違うだろうが」

 能力者は日本だけでなく世界中に居るとは聞いているが、そういった牽制のようなやりとりもしているのか。

「外国語ができる能力者ってそんなに少ないんですか?」

「ああ、能力に目覚めれば一般的な職業にはまず就かねぇ。大多数がアマテラスに所属することになるからな。所属してからは英語を話せることより、能力の優位性の方が評価される。だったら、誰も英語なんて勉強しないのさ。アマテラスに所属する前からある程度話せたり、所属してからも自主的に勉強してる奴は居るには居るが、実力者ってなると途端に居なくなっちまう。そこん所いくと、お前は使いやすい人材だ。なんてったって、英語どころじゃなくどんな言語だって理解できて話せるんだからな」

「それって、海外派遣されるってことですか?」

「可能性の話さ。あくまで俺の見解だ。ただ、お前の場合はもっと入り組んでる話だろうとも思ってるぜ。なにせ向こうの世界ってのがどういった所なのか全く知らされてないんだからな」

 そう言ってブラッドは親指を水樹に向ける。どうやら、水樹が向こうの世界を調査した報告書の類はブラッドの目に触れていないらしい。

「まぁなんにせよ俺とお前は今日限りだ。それと、猫とクロもお前に付いていくって話になった。そこの小さいのは元々お前付きだから関係ないが」

 小さいのというのはシルヴィのことだろうが、水樹とクロちゃんが付いていくとはどういった話だろうか?

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