異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第97節

漢字ふりがな 加重の力を切り、身体強化を行い、弾かれるような速さで森を疾走する。
 僅かな魔力の気配からジェイドの居場所を探り、魔人に囲まれるルディとジェイドを発見した。
 魔人達の纏う魔力の濃密さから、俺が戦った魔人よりも魔力が濃い事が分かる。

「ルディ! ジェイド! 無事か!?」

 あえて大声を上げることで魔人達の気を引きながら二人の様子を伺うと流血はしているが、四肢は無事であることが分かる。

「かなり厳しいです!」

 どうやら俺はルディやジェイドの実力を過信していたらしい。もともとルディは一介の冒険者であり、ジェイドはメイドだ。そして、魔人は一人ですらそれなりの強さを持ち、それが徒党を組んで襲ってくるのだ。俺や水城は規格外としても、フランのような本物の実力者が常に傍にいると戦闘力の基準が高くなりすぎるのかもしれない。
 そう考えれば、ルディには地域防衛よりも偵察や警戒を主眼とした作戦を組んだほうが良かったかもしれない。
 反省をしながらもこの場を切り抜けるために魔人を切り伏せ、カオスを振るう俺の姿が奴らの目的の人間である事を誇示する。

「黒き風が現れたぞ!!」

 魔人の一人が声を上げ、魔人連中の纏う魔力が一段と濃くなる。それに合わせ、俺もまた魔力を体内外に充実させた。
 武術では劣ろうとも魔力と腕力では勝っている。ならばここはごり押しで打開する。
 先ほどの水城の戦い方を参考にし、カオスの形態を剣から棒へ。長さは十メートルを超える程に。それを振るい奴らを屠る。
 木々を薙ぎ倒し、魔人を薙ぎ倒し、俺の半径五メートル程の範囲で残ったは魔石と木の根だけだ。
 ルディ達を挟んで俺と反対側にいる魔人達もこの光景にはさすがに二の足を踏むようだ。

「話と違うじゃねぇか!! 黒き風は噂程強くないって話だろ!?」

 噂?
 大柄な魔人が余裕の表情を一変させた。

「噂って何のことだ!」

 先ほど口を開いた魔人に声を掛ける。

「あんたが実はそれほど強くないって聞いたんだよ!!」

「誰にだ!?」

「ヨハンの野郎だよ!! 何か隠してやがるとは思ってたが、はなから俺達を捨て駒にする気だったんだ!」

 騙されたって事か。てっきりこいつらはヨハンの仲間かと思ったが、そういうわけでもないようだ。

「選べ! 降伏するか殺されるか!」

 ここで威圧するために魔力を体外に放出させた。
 周囲の大気が震え、木々がざわめき、それを感じ取った魔人達は萎縮した。

「俺は降伏する! こんな割の合わない仕事は願い下げだ!」

 一人の魔人が降伏したのを皮切りに他の魔人達も降伏の申し出をしてきた。
 そいつら一人一人と奴隷契約を交わし、逃亡を禁じて森の外で待機するよう命じた。
 本来ならば面倒な手順を踏む奴隷契約もカオスの力であっさりとしたものだった。
 そこで手に入れた情報だが、彼ら以外はおらず増援の危険はないらしい。

「……驚きました……いえ、今でも驚いているんですが、あの魔人達をあんな簡単に降伏させるだなんて……」

 先ほどの光景のせいか、ルディは驚きの感情を隠さないでいる。

「あいつらの結束力が弱かったからこそだろうさ。それより悪かったな。思った以上に敵が強かったようだ」

「すみません。俺の力が足りないばかりにカズキ様に助けてもらう形になってしまって」

「いや、俺の方も奴らがこれだけの人数を用意するとは思っていなかったからな。俺の落ち度だ。それより、ジェイド。無線機はどうした?」

「ご主人様、ごめんなさい……壊されてしまいました」

 ジェイドが手に持つ無線機は最早無線機とは言えない程に壊されていた。よく見ればジェイドの手も痛々しく血が流れている。魔人に壊された拍子に怪我したのだろう。

「とりあえず、代えの無線機を用意する。ジェイドは自分を回復させろ」

 本を開き、現代に用意してある補充物資から無線機を取り出す。
 まずは連絡を優先した方が良いだろう。

「こちら一樹。ルディとジェイドは無事だ」

 数拍遅れて応答した。

「良かったわ。それで、何があったの?」

 初めに反応があったのは水城だ。

「俺達の所よりも手練れの魔人がこっちに来ていた。生き残った魔人達を全員隷属化して森の外で待機させている。ルディとジェイドは軽傷だ。敵から聞きだした情報で増援が無い事は確認した」

「そう。なら、一度集まりましょう。二人は動けるのよね?」

 二人を見ると、頷いた。

「ああ。問題ない」

「なら、目印を立てるからここに来てちょうだい」

「ここって――」

 その直後、天高く伸びた何かが見えた。注意深く見てみれば、それは白い何かに黒い何かが巻き付いた何かだった。あれほどに長い何かを水城が持っていた覚えはない。後で訊いてみる事にしよう。

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