異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第92節

 ハリソンの言う策とは単純にして明快。サラを賭けた勝負をヨハンに申し込む事だ。
 今も森の国で得た協力者に動いてもらい、ロウ家でのみ使っている暗号を織り交ぜた広告を配布しているらしい。表向きの内容は新商品の試用。暗号化された内容は日時と場所を指定した決戦の申し込み。
 要はその広告は果たし状と同じだ。


「そんなに上手くいくのか?」


 正直、行き当たりばったりの計画だと思った。


「元々それなりに確率は高いと思っていましたが、カズキ様の話を聞き確信に変わりました」


「その心は?」


「私達がサラ様を得た直後にヨハンが現れました。これはタイミングとしては都合が良すぎます。元々、ヨハンは神器を探しており、その途中で我々を認識した。そう考える方が納得できます」


 その考えは一理ある。


「分かった。元々この件はヨハンに一任したもんだし、仔細は任せる。何か手伝いはいるか?」


「……ではお手数かとは思いますが、露払いをお願いします」


 露払い。要はハリソンとヨハンの対決に水を差す連中を一掃しろということだろう。


「いいだろう。それで、決戦の日時と場所は?」


「二日後の日没直後。森の国の南の森です」


 ハリソンが言う南の森とはサラを手に入れた森と同じだろう。


「分かった。それで、ヨハンを倒せる算段はあるのか?」


「……正直、分かりません。私の部下だった頃から奴は並々ならな力の持ち主でしたから」


「そっか。でも、こちらから挑む以上はどんな手段を使ってでも勝て。そして生き残れ」


 そう言ってとっておきの魔石をハリソンに手渡す。


「カズキ様、これは?」


「とっておきの魔宝石だ。使い捨てだが、その分効果を高めてる」


 魔宝石の使い方と効果をハリソンに伝えた。使うか使わないかはハリソン次第だ。


「それで? その試合の時にサラを使うのか?」


 使うならば勝率は上がるだろう。これだけの膨大な魔力があれば無尽蔵に魔術を操れるからな。


「いえ、今回はこちらを使います」


 そう言ってハリソンが抜いたのは護身用の剣だ。生まれも育ちも貴族だったハリソンは剣も魔術も両方嗜んでいる。


「でも、ヨハンだって魔術も剣も両方使うんだろう? 同じ土俵に立つのは不利なんじゃないか?」


 戦いは突き詰めれば自分の得意をいかに相手に押し付けるかだ。創作物での言葉だが、間違いではない。


「肉薄した戦いの時、最後に物を言うのは魔力より体力です。カズキ様からいただいた魔石の数々のおかげで魔力は十分にあります。あとは白兵戦でどれだけ奴を相手にできるかがきっと鍵になってきますから」


「……そういうなら好きにしろ。ただ、自分の孫の顔も見ないうちに死ぬなよ」


 俺はついからかい文句が出たが、それを聞いたハリソンの顔は非常に驚いていた。

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