異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第92節

「お父様がここにいるのでしょうか?」


 俺のすぐ隣を歩くアイリが聞いてきた。


「そうらしい。でも、なんでこんな所に来てるんだ?」


 元々ハリソンは森の国の出身。知り合いに挨拶でもしているのかもしれないが、どうにも腑に落ちない。


「ハリソンさんって悪い魔人を倒しにこっちに来てるのよね?」


「そうだけど、水城はその話どれぐらい知ってるんだ?」


「そこまで詳しく知らないわよ。その魔人がハリソンさんの元部下だったってことぐらいよ。私が知ってるのは」


「俺も似たようなもんだ」


 あとは容姿がトール人とシーク人のハーフってことぐらいか。


「なら、その魔人はその時みたいに誰かに仕えてるって可能性があるんじゃないかしら? ハリソンさんもそう思って探してるのかも?」


「確かに一理あるかもしれないが……闇雲に探して見つかるような物なのか?」


「あくまで可能性の話よ。か・の・う・せ・い」


 推論は推論でしかない。


「……そうだよな」


 引寄せ石が引寄せあう方角の変化量が徐々に大きくなり、ある屋敷の前で立ち止まる。


「たぶん、ここにハリソンがいる」


「カズキ」


「どうした? カオス」


「宿にあった気配。この屋敷から色濃く感じるぞ」


 気配といえばカオスの分身の気配だったか。


「やっぱりハリソンが神器を持ってるのかもしれないな」


 まずは屋敷に入ろう。


「ロージー、この屋敷の人間と会いたいんだがどうすればいい?」


 この世界の礼儀なんてものを知らない俺はそこらへん全てをロージーに丸投げた。


「分かりました。少々お待ち下さい」


 あとはロージーが全て円滑円満に物事を進め、この屋敷の主人との面会の約束をすぐに取り付けた。
 その際、ハリソンが訪れている事も確認している。そして何故か森の国のお姫様たるキャス王女まで同行しているというのだから水城以外の全員が頭をかしげた。
 そして、屋敷の主人からの申し出で昼食の誘いも受けた。いきなり押しかけた手前、誘いを断るべきか遠慮するべきか迷ったが時間を惜しんで断った。


「ハリソン、フラン。久しぶりだな」


 俺の体感では一月ほどだが、実際は半月ほどだろう。久しぶりと言うのは若干語弊があるかもしれない。


「お久しぶりです。カズキ様」


「久しぶりです。主」


 いつもの丁寧な物腰。美形で長身。久しぶりに見てみると少女漫画の攻略対象の一人みたいなキャラだなこいつ。
 フランの方も元気そうだ。


「カズキ様、お久しぶりです」


「キャス王女、ご健勝そうで何よりです」


 さすがにパーティーのような煌びやかな装いはしておらず、化粧も濃くはない。俺個人の好みで言えばこっちのラフな姿の方が好きだが。


「一樹。見惚れてないで話進めなさいよね」


「分かってるよ」


 小声で俺に耳打ちをする水城に言い返しながら話を進める。
 他の耳目に注意しながら魔人と神器に関する話をハリソンとキャス王女に伝える。
 正直、神器周りの話をキャス王女に聞かせるか迷ったが森の国に関わることでもあるので筋を通すために話した。
 しかし、俺の迷いを余所にキャス王女は既に神器の存在を知っていた。正確に言うならば、ハリソンが持っている神器の存在を認知していた。


「ハリソン。まさかお前が神器を持ってるなんてな」


 ハリソンが持っている杖をマジマジと見つめる。


「以前、カオス様に触れた時の痕跡をサラ様が感知して招かれたのです」


「主様。お久しゅうございます」


 ハリソンが持つ杖から声が聞こえる。これがハリソンの持つ神器、ハリソンが名付けた名前はサラというらしい。


「ああ。貴様も我と同様、長い時を過ごしていたようだな」


「こうして主様に再会できる日を心待ちにしておりました」


 今現存する魔族はカオスに隷属はしていないようだが、どうやらこのサラはカオスの事を主と思っているらしい。


「積もる話もあるだろう。少し場所を変えないか?」


「一樹。それなら一度、和の国に戻らないか?」


「……そうだな」


 どこに魔人の耳目があるかも分からない。それはこの街の中ではどこも同じだ。そうすると安心できるのは和の国だけだ。


「キャス王女。これからお見せする事は他言無用でお願いします」


「……分かりました」


 キャス王女は一瞬躊躇った後、同意した。
 その後、人目を避けるように路地裏に入り、ゲートを開く。俺の手助けを不要とする水城に先行して準備をしてもらい、その間にキャス王女に現状をさらに詳しく話した。


「つまり、魔人は神器を巡って四大国で暗躍している……ということでいいのかしら?」


「理解が早くて助かります」


「……そうすると、今この場に陽の国のカオス様、森の国のサラ様。そしてあとは山の国と湖の国ですか」


「そうですね……」


 俺の森の国での目的はサラを手に入れた時点で終わっている。俺としては次は山の国か湖の国か、そのどちらかに向かう。
 だが、ハリソンは違う。


「ハリソン。お前はどうするんだ? まだ奴を見つけてないんだろう?」


「ええ。ですが、奴を誘き出す策は既に講じております」


「策ってどんな?」

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