異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第91節

 ハリソンに持たせた裏道と言うのは献上品と同じく馬車に積み込んだ一枚の絵だ。それは俺が持つゲートと繋がっており、いつでも俺はハリソンの近くまで行けるようになっている。
 本来ならば、ハリソンが助けを求めた時にすぐに俺が助けに行けるようにしたライフラインだが、今回はそれを利用する。
 まずは偵察として俺一人でクロックルームに入り、たくさんあるゲートを眺める。現代も異世界も変わらない景色を映し出しており、クロちゃんやシルヴィがせっせと倉庫内で仕事をしている姿も見えた。
 そして、俺がハリソンに渡したゲートはどうやら馬車からどこかの建物の中に移されているらしい。
 周囲に危険は無さそうな事を確認して他の連中も連れてくる。
 狭い室内に俺達五人。


「やっぱりご主人様のお力は凄いですね……絵をくぐるだけで別の所に出れるなんて」


 俺の能力にまだ慣れないジェイドは目をぱちくりとさせている。


「移動も一瞬だから、夜になったらまた帰ればいい。それより、ハリソンはどこだ?」


 引寄せ石を取り出してハリソンの居場所を探る。
 本来ならこの引寄せ石はハリソンがピンチに陥った時、俺に連絡するための手段として渡しておいたものだ。これを割れば俺がすぐにこのゲートを使って駆けつける。そういう手筈だった。


「えーっと、こっちか」


 方角を確かめ、早速その方角に向かう事にした。
 どうやらこの建物は宿だったらしく、ぞろぞろと俺達が店を出るときはさすがに宿の店主から声を掛けられたが、ロージーが上手い事店主を言いくるめてくれた。
 それにしても、それなりの金を渡していたつもりだったが簡素な宿を使っている当たり散在はしてい無さそうで何よりだ。


「カズキ」


 宿を出るとカオスが話しかけてくる。


「どうした?」


「先の部屋、強力な魔力の残滓を残しておった」


「強力な魔力? それってハリソンの物じゃなくて?」


「ハリソンの物とも違う。そうだな……トールに渡した我が身の一部に酷似しておる」


 トールと言えばトール人の名の由来となった背の高い女性魔術師だ。そのトールが持っていた神器はこの森の国のどこかにあるだろうとは思っていたが。


「まさか、既にハリソンが神器を入手してるって事か?」


「可能性は否定できん」


 そもそもハリソンの狙いは魔人ヨハンだ。もし、そのヨハンが神器を狙って居た場合、ハリソンもまた神器を探したとしてもおかしくはない。


「まぁ考えるよりハリソンに会った方が話が早いか」


 どれだけ想像をめぐらせたところで、想像は想像の域を出ない。
 引寄せ石で逐次方角を確認しながら歩いて行くと、現代で言う所の高級住宅街、そういった区画に足を踏み入れることになった。

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