異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第86節

 俺はベッド、目の前の男には椅子に座ってもらう。


「カンザキ王、話とはいったい?」


「それなんだけどさ。ブリッツさん、魔人ですよね?」


 ブリッツの穏やかだった笑みが一瞬凍り付く。しかし、それもすぐに元通りになる。


「やはり、分かりますか」


「やはり、ということは俺が魔人を識別できる事を知っていたと?」


「知っていたというよりも勘ですかね。ワシを初めて見た時、カンザキ王は明らかに動揺しておりましたから」


「おっと、そんなに分かりやすかったですか?」


 別にポーカーフェイスに自信がある訳ではないが、そんなに簡単に看破されると笑うしかない。


「それにワシがシャルルは魔人ではないと言った時、カンザキ王は薄く笑っておりましたからな」


「これは失礼。ブリッツさんが人間を指して魔人ではないという構図にユーモアを感じまして笑ってしまいました」


「それは気にしておりません。なにより、ワシを魔人と知りつつこうして会食に招き入れたのも話が有っての事。違いませんかな?」


「仰る通りです」


 しかし、この魔人の洞察力は中々に鋭い。もしくは俺が分かりやすいのか。


「では、率直に交渉を始めましょう。そちらの要求は?」


「我らがこの地に定住する許可を」


「その代償に貴方達は何が払えますか?」


「彼らの労働力の提供。それと、ワシが知る魔族の動きを」


 魔族の動き?


「まぁ労働力の提供は当然として、ブリッツさんが言う魔族の動きとは?」


「詳しくは申せませんが、人族に混じる魔族の企てを」


「ほう」


 この情報は喉から手が出るほど、と言うほどではないが上手く事が運べば外交カードに成りえるかもしれない。


「ちなみにこの地に定住するというのはこの街ですか? それとも私が保有する領土内のことですか?」


「領土内であればどこでも。ワシらには故郷が無く、安寧の土地がありませぬ。シャルルの子にはきちんとした故郷を持ってほしい」


「……まぁいいでしょう。彼らを強く拒む理由はありませんから。まだ手が付けられていない土地を宛がいましょう」


「ありがとうございます」


 ブリッツさんは深々と頭を下げる。


「しかし、何故あなたは魔人なのに人族の彼らを庇護するのですか?」


 俺は一番気になっていた質問を投げた。


「ワシのような魔人は他にも居る。魔族の生き方に嫌気がさした者や飽きた者。あるいは人族の生き方に共感した者や憧れた者。そう言った魔外者マガイモノと呼ぶ」


「……魔外者ですか」


「人の友を持つ魔人、人に恋する魔人、人を慈しむ魔人、そういった存在の事をそう呼ぶのだ。そしてワシもその中の一人」


「それは嘘偽りなく?」


「もちろんだとも」


 さも当然、というようにさらっと言ってのける。


「……ちなみに彼らの中でブリッツさんの正体を知っている者は?」


 俺の問いにブリッツさんは俺から視線を切って虚空を見つめていた。


「……昔は居たが……今はもう居ない」


 嘘か回想か。こういう時にシルヴィの嘘を見抜く異能の力があれば便利なんだろうけど……まぁあいつの能力は異世界人には通用しないんだけど。


「まぁいいでしょう。では、貴方が握っている情報。こちらをお聞かせ願いたい」


 俺にとって最も利益をもたらすであろう話をブリッツに振った。

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