異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第84節

 青年が連れてきたのはファンタジーでよく見かけるドワーフのような容姿のおっさんだった。背の高さはタイン人並だが、褐色肌に筋肉質な特徴はシーク人のそれに近い。しかも、体内に宿す魔力はトール人と遜色ないと来ている。


「初めまして、和の国の王」


 年季の入った低い声の背の低いおっさんは笑みを浮かべて手を差し出してきた。


「初めまして。あなたが彼らの代表ですか?」


 俺はそう返しながら小さなおっさんと握手を交わす。


「そうですとも。ワシはブリッツという」


「私は神崎一樹」


 このブリッツという男。非常に人間味溢れて見えるが、その正体は魔族。しかしまさか、流浪の民の代表が魔人だという事実に俺は少しばかり戸惑っていた。


「カンザキ王。わざわざワシらの所までご足労頂きありがとうございます」


 深々と頭を下げるブリッツに習う他の皆。全員がこの小さなおっさんに信頼を寄せている事が容易に分かる。
 俺はこの場でこの小さなおっさんが魔人であることを指摘できなかった。それはきっと、彼らに配慮したからだろう。この場で指摘すれば、戦闘に。戦闘にならなくとも、険悪な雰囲気が漂うのは容易に想像がつく。


「頭を上げてください。王とは言っても四大国に比べれば小国の王。それもつい最近成り上がった身ですから」


 俺は彼らの頭を上げさせた。するとブリッツは皆に野営の準備を続けるよう指示を飛ばし、皆がそれに従う。


「これだけの人間を束ねて各地を回っているんですか?」


 話題を変えつつその場に簡単な土製の椅子を幾つか生み出して腰掛ける。
 ブリッツも驚きつつ、俺が座るよう促すと一礼して腰掛けた。


「ええ、ワシらは流れ者故、各地を転々としております。西へ東へ、北へ南へ」


 彼らを眺めていると馬や羊、山羊、あとはそれに類する動物達を連れている。俺が思うに流浪の民というより、遊牧民と呼んだ方が俺には馴染みがあるかもしれない。


「あの家畜達は商品ですか?」


「ええ、そうですが……もしかして、入用ですかな?」


「そうですね」


 馬や牛は食材にもなれば、労働力にもなる。
 それに気が早いかもしれないが、これから冬へと移り変わるため防寒具としての羊の毛は需要が見込める。
 あとあの家畜らが魔獣でないことはすぐわかる。


「商談はこっちのロージーに任せるとして……そうですね。折角ですから今晩の夕食に貴方がたをお招きしたいのですがよろしいでしょうか? さすがにこの場の全員という訳には参りませんが、いかがでしょうか?」


 色々と話したいが、この場で話すわけにもいかず、それならばそういう場をセッティングした方が早いだろうと考え、ブリッツに対し提案してみた。


「それは是非ともない申し出。是非ともお招き預かりましょう」


 ブリッツは迷うことなく俺の申し出を受け入れ、時間と場所、人数を擦り合せて簡単な会合は終わった。

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