異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第82節

「あれ? カズキ様、もうお戻りですか?」


 アイリに出かけると言ってクロックルームに向かい、すぐに時間を止めていたせいか俺にとっての数日もアイリにとっては十分と経っていないことになっている。


「ああ、ただいま」


 俺の身体は寝食を忘れ、何かに没頭したとしても疲れない身体となってしまっていた。噛み砕いて言えば、人の身体ではなくなってしまっている。
 食事も睡眠も排泄も不要。魔力と言う糧さえ得られれば無限に生き続ける事の出来る身体。
 俺自身、あまり実感はなく端的に言えば疲れにくい身体程度の認識だ。気分次第で食事もするし、睡眠もする。食事で魔力を補給もできれば、睡眠によって精神的な安らぎだって得られる。要は人間としての欲求が必須ではなくなった程度だ。
 困った事と言えば、元々が人間の身体だっただけに必須となった魔力に対する欲求が全くないと言ったところか。そこらへんはカオスが注意してくれているから今は問題ないが。


「おかえりなさい。そうえいば、先ほどお母様がいらっしゃって、移民を希望する方々がカズキ様に面会を求めているそうですが、どうしましょうか?」


「移民?」


「お母様の話ですと、混血の集団で祖国を離れた流浪の民の末裔だとか。安住の地を求めて世界を回っているとカズキ様が新しく国を作るという話を聞き、やってきたそうです」


「移民ねぇ……」


 俺自身、差別意識はそれほどないが区別意識はある。移民は労働力の起爆剤にはなるだろうが、それ以外の問題もついて回る。
 俺に差別意識が無くても、ここの住民はあるかもしれない。いや、確実にあるだろう。なぜならば、それが文化だからだ。しかも、それが単なる差別主義者による差別ではなく、魔族が混血の容姿をするという裏付けがあるからこそ、根付いた風習でもある。
 それに移民は衛生状態が良くなく、疫病をもたらす可能性もある。そのため、移民を受け入れるのは非常に高いリスクを負うことになる。
 切り捨てるのは簡単だが、なんとかしてやれないかという俺の甘さも出てくる。いや、甘さと言うよりは与えられた問題に対して、どう解決できるかと言うパズル的な思考かもしれない。
 移民に関する問題を纏めると何点かに絞られる。
 一つ目は領主の認可。これは俺の采配一つだから問題は無い。
 二つ目は領民の理解。これが難しい。
 三つ目は移民の持つ病気などのリスク。これも難しい問題だ。
 現代での移民政策と異世界とで違う点を挙げるとすれば、現代は民主制で異世界は封建制だという事か。要は移民の数が増えた所で国の代表が変わらないという点だ。
 それに現代と違い、こちらの世界では仕事のパイはまだまだ余っている。農業に畜産、林業と人手はいくらあっても足りないのだから。
 なるほど。領主となるとこういった問題に対して何らかの決断を出さなければならないのか。
 人手は欲しいが、リスクはある。


「とりあえず、会ってみようか」


「分かりました。会談の用意をしますので、少しお待ちを」


「いや、会談ってことは代表とだけ会うって事だろう? 折角だからこっちから出向こう。どこに行けばいい?」


「それですと、ヒノモトの外。そこで野営をしています。これはオセロ子爵の認可が下りた正式な物です」


「そうか。なら行こう」

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