異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第81節

「さすがに疲れたな」


 俺は誰もいない部屋。クロックルームで二つの世界の時間を止め、修行に明け暮れていた。いや、時間が流れないのだから明けも暮れもしないが。
 行っていたのはロージーから教わった魔石学、及び魔石術の基礎を応用し、発展させるものだ。
 そのため使用した魔石の数は膨大で、金銭で換算するならば並の貴族の家財を食い潰す程度の量は消費した。タイン人が一子相伝で研究内容を秘匿するのも分かる。だが、その見返りも確かにあった。
 魔宝石を介さず、カオスの力を借りることもなく、魔石術のみで魔術を発動することに成功した。それも両の手では数えれないほどに豊富な種類の魔術をだ。実際はその一つ一つは単なる現象。水を生み出す。熱を生み出す。冷気を発する。砂を生み出す。風を起こす。その他いろいろだ。
 しかし、単なる現象とはいえ色々と発見するものもあった。
 例えば、一言で水を生み出すといっても様々な生み出し方があった。魔石学準拠の回路をあれやこれやと弄ると普通の液体状の水から、ミスト状の水、冷たい水やお湯と呼べるような熱い水も出た。時には触れると皮膚が爛れるような未知の液体が出て来ることもあった。
 俺のバカげた自然治癒能力が無ければ瀕死に陥りかねない事故も多発したが、なんとか魔石術の解明に一歩近づいた。
 これをタイン人達が時間と金と人命を賭して長年培ってきたのかと思うと脱帽だ。
 何はともあれ、実用化の目途はついた。
 後はこれらの技術を異世界でどう利用するかだ。魔石は現代で言う所の石油や石炭のようなエネルギー資源であり、これらをどう安定的に手に入れるかが課題になってくるだろう。調達先は魔族からであり、魔族を狩るには……。


「これじゃあまるで魔族を資源として見ているみたいだな」


 自分の思考にどこか危ない臭いを感じ、一旦冷静になる。
 人間にとって魔族は忌むべき存在であり、魔族なんて狩り尽くして喜ばれることはあれど、嫌がられることは無い。ただ、俺自身に魔族にはそれほど憎悪がある訳ではない。
 個人を嫌う事はあれど、種族・民族を一緒くたにするのは俺の趣味じゃない。


「しかし、折角の研究成果だしな……」


 あとの流れは他の人間に任せよう。俺は俺のために、俺の充実な生活のために技術を使う。ただそれだけだ。
 研究を引き上げ、異世界に戻る。

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