異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第79節

 これで何度目かになる登城。
 城門の兵士に名前と用件を告げ、中に入る。
 約束無く王女に会えるのは和の国の遣いだからこそだろう。
 陽の国、森の国、山の国、湖の国と四大国あるが、陽の国と山の国は男性優位、森の国と湖の国は女性優位な面があり、その森の国の王女たるキャス王女はそれなりの権力を持っている。故にキャス王女に近づこうとする者は少なくない。ある意味、私達もその例に漏れない。
 ただし、私達の背景には魔王殺し、救国の英雄たるカズキ様がいるため無碍には扱われない。


「ハリソン様、今日はどういったご用件で」


 挨拶無く本題に入ろうとするあたり、少し機嫌を損ねたらしい。


「度々の訪問、申し訳ありません。今日は折り入ってご相談があって参りました」


 私は恭しく礼をしつつも、キャス王女の言うとおり本題に入ろうとした。だが、彼女は私が手に持つ杖に注視してのに気が付いた。


「その杖……ただの杖じゃないですね」


 それが鑑定眼によるものか、私と同じ魔力を感じ取る能力のためかは分からない。しかし、ここで隠すことによって疑心を与えるか、明かすことによって疑心を与えるか、一瞬の判断の後、明かすことにした。


「……サラ様」


「なにかしら?」


 サラ様の言葉にキャス王女は戸惑いながら、私の後ろに視線を向ける。きっとフランさんやアンバーの事を見ているのだろう。


「キャス王女。今の声の主はこちらです」


 私が杖を掲げてみせるとキャス王女は信じられないといった様子で杖に視線を向ける。


「初めまして、森の国の王女」


「……初めまして」


 戸惑いながら挨拶を返すキャス王女。


「こちらはサラ様。簡単に申しますと意志を持った魔剣の一種です」


「意志を持った魔剣……ということはやはり、魔人の」


「単なる魔人ではありません」


 先に釘を刺しておく。でなければ、話が前に進まない。


「サラ様はその昔、人に力を貸し、人と共に魔族と戦った存在と聞きました」


「魔人が人に力を貸したと?」


 信じられないといった様子のキャス王女。それもそのはず。意志を持った魔人が人のために力を貸すというのは滅多にないことだ。
 私もカオス様のことを知らなければ、今ほど簡単には受け入れられなかっただろう。


「今、貴族達の間である噂が広まっていることをキャス王女はご存知ですか?」


「噂?」


「南の森に秘宝が眠るという噂です」


「もしや、それが噂の真実ですか?」


「そうです。その経緯もお話しましょう」


 私は森の国に来た本当の理由を交え、王族殺しの真犯人、ヨハンとの遭遇に関しても包み隠さずキャス王女に話し、その末にサラ様のことを話した。

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