異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第78節

 日は昇り、私達のいる宿の一室まで人々の活気が耳に届き始めた頃、フランさんは武器の手入れを、私はヨハンとの戦いに向けて新たな術の改良を試行錯誤をしていた。
 ルディが情報収集を初めて早三日。
 その日の終わりに都度報告をしてくれ、現状としては国内の半分以上を虱潰しに調べ終わっている。にも関わらず、ヨハンの影を捕まえるに至っていない。
 残っている場所は上流階級の人間が住む区画と王城といった冒険者でも中々に近づきがたい場所だ。
 ルディ曰く、熟練の冒険者ならばそういった人間とも繋がりがあるかもしれないが、その熟練の冒険者自体が廃業している。なんとかルディや他の冒険者が貴族に雇われた元冒険者との伝手で調べている状況ではあるが、それでも中々に難しいところらしい。
 国外に出た様子が無い以上、ヨハンが国内にいることは間違いない。故に調べ残したそこらにヨハンがいるに違いない。
 ルディやルディの選んだ冒険者はよく仕事をしてくれ、十分な情報は手に入れている。ならば、私も少し動くべきだろう。
 幸い、カズキ様が編み出した改良魔術に私なりの更なる改良を加え、良い結果が得られて区切りもついた。


「サラ様、少しよろしいですか?」


「なんでしょう?」


 今のサラ様の姿は抜き身の片手剣だ。鞘はなく、国内に用いれるために布を巻く必要もあった。


「カオス様は自在に姿を変えることができましたが、サラ様も姿を変えることができるのでしょうか?」


「可能です」


「では、杖の形を」


 私達魔術師は一般的に魔宝石を取り付けた杖を好む。魔宝石は即席の魔術の行使に向き、魔術師が魔術を行使するために時間を大幅に短縮できる。単純な放出系の魔術は障壁系の魔術ならばこちらの方が速い。
 また、剣でなく杖なのは心得のない者が刃の付いた武器を持てば自傷をしやすいためだ。他にも色々な理由から魔術師は杖を好むのだ。いや、好むというよりも最早文化といってもいいだろう。
 もちろん、剣の心得がある者は剣の柄に魔宝石を取り付けた者もいるし、私自身剣の覚えが全くないというわけでもない。だが、優れた剣の腕を持つフランさんの前で剣を持つのはどうにも居心地が悪かったりする。
 ともかく、サラ様は私の提案を受けてその形を杖に変える。
 それは一般人から見れば何の変哲もない杖だろうが、内包する魔力は森の二つ三つを内包したかのような生命力溢れる物だった。本来ならば、形を成さないただの力の源のはずの魔力が脈打つような流れを感じる。
 これだけの魔力があれば、できないことはないと錯覚させるほどだ。


 私は杖を手に取り、フランさんとアンバーを連れ、もう一度王城に向かった。

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