異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第77節

 私達は一度宿に戻り、再び部屋を取り直して一晩体を休めた。
 カズキ様の指示で動くことが多く、貴族の身の頃よりは体を動かしていたつもりだったが、日中歩き通しともなれば疲労も出る。
 フランさんとルディはまだ余力を残しており、小さい身体のアンバーも一晩も立てばほとんど回復していた。こういう時、自身の身体の老いを嫌でも感じさせられる。


「サラ様、ヨハンが出国した様子はありますか?」


「ないですね」


 まだこの国にはいるらしい。


「仮に通常の手段を取ることなく国外に出たとしても、どこに向かうにしろ森を通る必要があります。その場合でも彼らは探知するでしょう」


「通常の手段以外ですか」


 そういえば、カズキ様がサニングに通常の手段ではない方法を取って入国する事で魔族の目を掻い潜ったと言っていたことがありましたか。そのような裏道ともいえるルートがもしかしたら、この国にもあるのかもしれません。何にしろ、そのような手段を取ったとしても感知できるならば安心できます。
 あとはどうやってヨハンを見つけるか。
 向こうは私達が探している事を知っている以上、こそこそと動く必要もない。


「やはり、調査は地道にやるしかありませんか」


 こういった時、地元のルディは頼りになる。
 偏屈だったり頑固だったりする冒険者の中で人当たりが良く腕が立つルディのような存在は重宝する。
 私は部屋を出てルディの所へ向かう。連絡の兼ね合いもあり、彼の部屋もとってある。


「ルディ、いいかな?」


「はい」


 部屋に入ると中にフランさんも居た。


「おや、お邪魔でしたか?」


「いいえ。少しルディ君に剣についてお話を」


「そうでしたか」


「俺、もっとフランさんに剣を教えてもらいたいです!」


「そう言われてもな……私は既に冒険者を引退して、今ではこの剣は主の物」


 それでも諦めきれない様子のルディ。そういえばルディは村に常駐していた兵士に師事して今の剣術を身に着けたそうだが、それ以降はほぼ我流だ。師が居なくとも真っ直ぐな性根に合わせ、真っ直ぐな剣技を身に着けている。少なくとも私はそう感じているが、フランさんに師事すればきっとルディはもっと優れた戦士となれるだろう。
 惜しいとも思うが、過ぎた肩入れはよくない。


「ルディ、あまりフランさんを困らせてはいけませんよ。それより、君に頼みたい話があるんですがいいですか?」


「俺に? もしかして、あいつを探せって?」


「そうです。先ほどサラ様に聞いた所、まだヨハンはこの国の中に居ます。どこかの宿か仲間の魔人の所か、はたまた貧困街あたりで野宿しているかもしれませんが、探してくれませんか?」


「それはいいですけど、さすがに今日明日見つかる保証はないですよ?」


「それは分かっています。そこで、いくらか資金をお渡しします」


 私が取り出したのは金貨二枚。


「このお金を全て使ってもらって構いません」


「これで人手を集めろって事ですか?」


「人手、情報、何を手に入れるにもお金は必要ですからね」


「分かった。最近は依頼も減って手空きの連中が多いから、そいつらに当たってみるよ」


「頼みました」


 ルディは大金と大役を任されたためか、少し興奮気味に宿を出て行った。


「フランさん、もし彼がヨハンの居場所を見つけ出したら少しだけ剣を教えてあげてくれませんか?」


「……ハリソンさんまでそんな」


「もし、剣をカズキ様に預けたというなら、私からカズキ様にお願いしてみましょう」


「そこまで肩入れするんだったら、あの子を引き取ったらいいじゃないですか」


「ルディを引き取る?」


「私はカズキ様に私兵の教練を頼むって言われてますから、ルディを和の国に連れ帰ればそうなりますよ」


「……なるほど」


 それは考えておかなければなりません。

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