異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第75節

 私達はヨハンの後を追った。方角としてはフォレストに帰る道と同じだ。
 道中、問題らしい問題も起きることなく、帰りの道を淡々と進む。


「先ほどから魔獣を見かけませんね」


 あれほど限りなく湧いて出ていた魔獣が一切姿を見せない。


「貴方達は彼らをあまり好まないようですから、姿を隠してもらっています」


 どうやら、サラ様が魔獣を退けてくれているらしい。


「サラ様はどんな魔獣にでも命令ができるんですか?」


「いいえ。この土地で生まれ、育ったモノのみが私の意思を汲んでくれます」


 命令を聞くといった強制的な物ではないらしい。


「では、魔人に命令は?」


「できません」


 それはキッパリと断言した。


「私ができることはせいぜい魔力を蓄える事。この森も魔力を蓄える手段として生み出したものですし」


 森を、生み出した?


「すみません。それはどういうことですか?」


「私は来たるべき時のため、魔力を蓄える事にしています。しかし、魔力を周囲から奪うだけでは枯れ果て、いずれは魔力の吸収もままならなくなるでしょう。そこで、僅かな魔力を使い先ほどの魔獣達を生み出しました。魔力を枯渇させないよう、常に森を成長させる。その結果が今です」


 サラ様の言葉にこの場に居る全員が唖然とした。


「……それはいつからですか?」


「忘れました。ただ、北に人間が住み始めるより前ではありますね」


 北。それはフォレストがある方角だ。つまり、サラ様はフォレストが建国する前からこの地に――。


「俺、分かんないんですけど。それってつまり、森の国が森の国って呼ばれてるのって、その剣が森を作ったってことなんですか?」


「……そういうことになりますね」


 トール人がこの森に居を構えたのは、この土地の豊富な魔力のためだ。その実、サラ様が長い年月をかけて豊かな森を生み出した。


「北に人が住み始めてからは魔獣達を北に向かわせることはしませんでした。人々は森を切り開き、国を構え、そして森と共に生きる道を辿りました。北に人間、南に砂漠。これ以上無理に森を広げなくてもいいと感じていました」


「待ってください。南に砂漠とは?」


「ここから人間の脚で一週間ほど南に向かえば広い砂漠に出ます」


 森の先に何があるか。森の国の人間でもそれを知る者はいない。

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