異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第74節

「ハリソンさん?」


 フランさんが私の顔を覗き見る。


「私達には聞こえませんが、もしかして、その剣と話をしているんですか?」


「……ええ。この剣はカオス様に関係する方が宿っているそうです。サラ様、他の彼女たちにも貴女の声が聞こえるようにしていただけませんか?」


「いいでしょう」


 サラ様の声にフランさん達が驚いた。


「今、サラ様の配下の小魔獣にヨハンを追ってもらっています。私達もその後を追いましょう」


「待ってください」


 私の提案にルディが待ったをかけた。


「どうかしましたか? ルディ」


「その剣に意思があることは分かりました。ですが、魔獣を配下にしているってことは魔人じゃないんですか?」


「…………」


 確かに、一般的には魔王は魔人を、魔人は魔獣を操るとされている。そしてそれは間違いではない。
 ルディは過去に魔獣に村を滅ぼされ、魔族に嫌悪感を抱いている。


「貴方の言う、魔人とは何なのでしょう?」


「人間の敵」


 ルディはキッパリと言い放った。


「だとするならば、私は魔人ではありません」


 私にとってもサラ様が何者なのかは分からない。ただ、分かることはカオス様に連なる存在であり、今は私達に力を貸してくれ、その身に内包する魔力は莫大であることぐらいか。


「私はカオス様の命により、人間に与する者」


「人間に与する?」


 ルディとサラ様のやり取りの中で気になった点を尋ねた。


「私はカオス様の身より生まれ、人が魔を退ける手段の一つとして生み出されたのが私です」


「それはどういう……」


 魔族とは魔王、魔人、魔獣の存在を包括的に呼称するものだ。しかし、サラ様やカオス様はそのどれにも当てはまらないように感じる。おそらく、カオス様とサラ様の関係は魔王と魔人の関係に近い物であることは間違いない。
 カズキ様はカオス様の力を借り、魔王を倒した。サラ様はカオス様の命により人に力を貸すと言った。この話に矛盾はないように感じる。お二人は人間にとって決して害ある存在ではない。


「ルディ。サラ様は私達に力を貸してくれると言っています。それに我が主、カズキ様の所有なさるカオス様、その方に連なるサラ様にはそれ相応の配慮が求められます。思う所はあるかもしれませんが、今は我慢してください」


「……俺は雇われの身です。依頼主に私的な意見はしません」


「ありがとう。ルディ」

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