異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第65節

 ルディにはあらかじめカズキ様について色々と話したつもりだが、異世界の人間という事を説明していなかった。私自身、理解が及んでおらず、上手く説明できないせいもある。
 カズキ様は自身が異世界の人間であることをあまり公にしたくないというつもりがあるらしいため、貴族の方々に聞かれた際もその部分に関しては不明瞭な答え方になってしまった。
 ルディに対してもそれは同じだ。仮にルディが私やフランさんと同じようにカズキ様の奴隷、あるいはジェイドやアンバーのような直属の部下であるならば教えてもいいのだろうが。
 結局、ルディには当たり障りのない答えで煙に巻いた。
 この鏡に関しても特殊な技術によって生み出した産物とだけ教えた。実際、私にもこのような品質の鏡を手に入れる手段が分からない。
 本来、この鏡にしても単なる献上品であり、菓子類や酒類と同じ物だ。一応、認識阻害魔術を潜り抜ける性質を持っているため、下手に出回れば色々と問題が生じることをカズキ様に進言した所、この件に関しては私に一任することで決着がついている。世間に出回っていない高品質の鏡は王侯貴族にとってステータスとなり、また認識阻害魔術の看破にまで使えるともなれば金貨を積んでも易々と手に入る物ではない。そういった意味では切り札と言ってもいいかもしれない。
 まさか取引とはまた違う場面でも切り札となるとは思っていなかったが、他の冒険者や貴族の私兵に比べ、一歩抜きんでていることは間違いない。
 明日は午前中を使って冒険に必要な一通りの食糧や道具、装備を整え、昼過ぎには森に入るつもりだ。馬車に積んでいた荷物のほとんどは先のパーティで消費したため、盗難の心配もない。身軽な物だ。
 僅かに残った物品もイゴールさんを通じ、売り払い、新たに得た資金で魔石を買い足そう。
 魔獣との戦いともなれば、魔石はいくらでも手に入るだろうが、金策目的で魔獣を狩る訳ではないのだ。効率的に魔獣を屠り、進路を確保。道中で手に入った魔石はそのまま戦備として確保し、適切に消費する予定だ。
 もちろん、ルディの働き次第では余った魔石の一部を譲っても構わないとは思うし、ルディが望むならば現金での支払いでも構わない。皮算用になるため、予め話すようなことはしないが、私の考えとしてはそのような用意もあるという事だ。
 また冒険に際し、リーダーをフランさんに頼むことにした。この場合のリーダーとは私達四人のチームで動く時のリーダーだ。冒険に関する知識や運営はフランさんの方が圧倒的経験者だ。方針は私が決め、実働はフランさんに任せる。適材適所というやつだ。
 そのような細かな打ち合わせは蝋燭を一本消費しきるまで続いた。

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