異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第63節

 徐々に人の数も減り、料理もはけ、演奏も終わり、外は月も見えない暗闇だ。
 結局、これだけのお膳立てをしてもらいながらヨハンを見つけることはできなかった。


「ハリソンさん、飲み物はいかがですか?」


「ああ、ありがとうございます」


 森の国で取れた果物を絞ったジュースだ。


「ハリソンさん。一つお耳に入れたいことが」


「なんですか?」


「護衛達と話していた時に聞いたのですが、護衛となったシーク人が三日と経たず姿を消したという話です」


「……それがヨハンと?」


「その人もあくまで噂でしか聞いていないとの事だったんですが、傭兵上がりの実力者でスカウトされたらしいんです」


「……それで、三日と経たずですか」


 折角スカウトで貴族の下についたにもかかわらず、直ぐ様姿を消した。
 まるで心変わりをしたような転身だ。いや、心変わりと言うよりも、目的が変わったとみるべきか。
 この場合、何を新たな目標にしたかとういことだが、私の勘は例の秘宝だと言っている。


「フランさん、仮にその噂の人物がヨハンだとし、わざわざスカウトをされて護衛になったにもかかわらず、姿を消したとして、何が目的だと思いますか」


「……その貴族の下に付き、何らかの情報を手に入れたから。それが自身にとって利になるか、不利になるかはともかく、離れるほうが良いと判断したと」


「具体的に聞きましょう。森の国に眠る秘法をその噂の人物が狙っている可能性は?」


「なくは無い……程度ですね。確証がありません」


「確かに、確証はありません」


 本当ならば、裏付けを取った上で行動したい。しかし、時間も惜しい。
 ……秘宝の探索を私達も行うべきでしょうか。
 ヨハンが秘宝を狙っていなかった場合、大きな時間的損失を被ることになる。しかし、秘宝を手に入れれば、少なからずヨハンへの対抗手段を得ることができる。


「ロウ様、今戻りました」


「ルディ、お疲れ様です。君も何か飲むといい」


「はい。いただきます」


 ルディもジュースを口にし、ぷはぁと息をついた。


「それで、ロウ様。話なんですけど、昔お世話になった兄貴に会ったんです。それで、禿頭のシーク人について聞いてみたら、武器屋で武器の手入れを依頼する禿頭のシーク人がいたって言ってたんです」


「それは本当ですか!?」


「その店が兄貴の知り合いの店らしくて、変わり者と余所者の話はすぐに広まるんです」


「……確証とまでは言いませんが、有力な手がかりですね」


 南といえば秘宝の目撃証言とも一致する。


「皆さん、秘宝の探索を目指します」

「異能力で異世界充実 ―非現実の扉―」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く