異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第62節

 華やかな演奏の中、私に押し寄せる人波。その中には私の見知った人物も少なからずいる。彼らの興味は既知の私ではなく、未知の王だ。
 カズキ様はどんな人物か。種族は、性別は、剣や魔術の腕は、あのお菓子や酒はどうやったら手に入るか。
 中には私の分からない質問まで出てくる。それらに一つ一つ答えては彼らの興味を刺激する。
 アンバーも質問攻めを受けている。主に料理についてだ。
 この世界では手に入らない食材や調味料を使っているため、この味を再現できる者はアンバー以外に居ない。
 そんな質問攻めを受けつつも、私達に近寄らない存在が壁際に無数に存在する。彼らはここにいる貴族の護衛だろう。重鎧や槍は手にしていないが、腰から下げる剣は如実に物語っている。
 その中にヨハンの姿は無い。
 そう簡単に見つけられるとは思っていなかったが、期待していただけに残念だ。
 私とアンバーが質問攻めの中、フランさんが彼ら護衛に近付く。
 何かを話し、礼を言ってまた別の護衛に。そういうやり取りを繰り返す。フランさんの方でも情報収集をしてくれているらしい。
 しばらくすると私を囲んだ人垣も徐々に無くなり、自由に歩ける程度になったところでキャス王女が現れた。


「ロウ様。本日はお越しいただきありがとうございます」


 エメラルドグリーンのドレスを身に纏うキャス王女。私も含め、会場に居る全ての人間の視線を一点に集める。


「こちらこそ、このような機会を与えていただきありがとうございます」


「どうやら私達が思っていた以上に和の国は受け入れられているようですね」


「陽の国でカズキ様が売り払った商品が彼らの手元に届いたようですね。多少、金策のためにこの国でも売りましたが、それも貴族達の手元に届けられたようで」


「彼らは珍しい物を好みますからね。そういった意味ではロウ様達が持ち寄った品々が彼らのお眼鏡にかなったということでしょう」


 確かに彼らは和の国自体よりも和の国の王や、和の国の特産品に興味があるようだ。まだ、カズキ様の世界の文化が和の国に根差していないため、文化的相違はない。また、和の国と陽の国の違いは極端に言えば、カズキ様の存在の有無しかないともいえる。


「キャス王女もお菓子が好きですよね」


「ええ。私も、妹達も」


「もしよろしければ、大使館の件に限らず交易条約を結ぶと言うのはどうでしょう? 今、あれらの品を手に入れるには和の国との取引しかありません」


「……そうですね。今回の件、お父様より私に委任されています。検討してみましょう」


「ありがとうございます」

「異能力で異世界充実 ―非現実の扉―」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く