異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第61節

 人が増え、会場が賑わいだした頃。フォレスト王が姿を現した。それに王族が連なり、その中にはキャス王女も見える。


「皆、よく来てくれた」


 会場全体に温和な声が広がり、談笑していた皆も笑みを絶やさず、しかし静かにフォレスト王の言葉に耳を傾ける。


「皆に報せた通り、今宵は賓客を招いての晩餐会。客人、一言良いだろうか?」


 フォレスト王に視線を投げかけられる。口調は温和だが、私を見る目だけは依然として厳しい。
 私は皆の注目を集める中、言葉を紡いだ。


「ご紹介に預かりました。和の国の使者、ハリソン・ロウです」


 既に多くの貴族との交流を経ているため今更の挨拶だが、今の私は森の国の元貴族ではなく、和の国のハリソン・ロウであることを改めて知らさなければならない。


「皆さんもご存じの通り、陽の国で魔族との戦争が起こりました。善戦虚しく魔王の手により、陽の国は一度、奴らの手に落ちました。そこに現れたのは我らが主、カンザキ・カズキ様。皆さんには魔王殺しと言った方が伝わるでしょう。カズキ様は果敢にも魔王とお一人で対峙し、勝利を掴み、陽の国を解放いたしました。その褒章として陽の国の土地の一部割譲を受け、新しい国を建国する運びとなりました」


 彼らにとって魔王殺しが建国する流れをおおざっぱに伝えなければならない。彼らにとってカンザキ・カズキという人物がどのような存在なのかという興味を満たすことも私の役割だ。


「カズキ様は森の国、陽の国、山の国、湖の国、この四大国との繋がりを強固にしたいとお考えであります。そこで、カズキ様は良き隣人、良きパートナーとしてまず初めに森の国との交流を深めたいとのお考えがありました」


 私の挨拶の中で貴族同士でちょっとしたやりとりを行っている。


「私自身も皆さまとの良い関係を築けるよう切に願っています」


 それを区切りに皆から拍手で迎え入れられる。


「では、パーティを始めよう」


 フォレスト王の合図とともに音楽が奏でられる。

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