異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第60節

「イゴールさん、そちらの方は?」


 私とイゴールさんとで話していると、男が声をかけてきた。


「ロイド様」


 イゴールが男の名前を呼ぶ。


「もしかして、彼がハリソン・ロウさんかい?」


「ええ、そうですとも」


 どうやら、イゴールさんから私の名前を聞いている人物らしい。見た目からして森の国の貴族に違いない。


「初めまして、私はロイド・ポッター」


「私はハリソン・ロウです」


 簡単な社交辞令を交わす。
 ポッター家と言えば優秀な魔術師の家系だ。偏り無く、多くの魔術を高いレベルで使いこなせる万能の血筋。ポッター家の人間が王族に仕え、魔術師によって構成された軍隊を率いる事も多い。


「あのポッター家のご長男のロイドさんですか?」


「ロウ様、ロイド様は既に当主となっております」


 私が世情に疎くなっていたのもあるが、この若い見た目から現当主とは思いもしなかった。


「失礼」


「いいんですよ。よく間違われますから」


 ロイドさんの見た目はトール人の感覚では二十代だ。トール人は見た目の老化速度は遅いが、若いうちはアベル人とそう変わらない。ロイドさんの容姿はアベル人の見た目で言うところの十代後半といった容姿でもある。


「イゴールさんから面白い話を伺いまして。新しい国、和の国からの使者が森の国を訪ね、国交を結ぼうとしていると。そこに使者を招いてのパーティを開催するとキャス王女より耳にして、イゴールさんと共にこうしてやってきたのです。ロウさんがその使者で間違いないんですよね?」


「はい。和の国の王、カンザキ・カズキ様の命により使者として森の国へ交渉しに来ました」


「例の魔王殺しの方ですね。その方に関しても色々と話を聞きたいと思っていました。きっと、このパーティはそういった好奇心の強い方を招き、その好奇心を満たす場でもあるのでしょうね」


「できる限りの質問はお答えしますよ」


 王族としても和の国との国交は結びたいという姿勢がロイドさんからの話の隙間から見える。王族としても和の国との国交は結びたいが、貴族達から批判が出るのは避けたい。そこで事前に批判が出ないようこうした場を設けたのだろう。これも一種の根回しか。
 私とロイドさんとで話していると、徐々に会場に入る人間が増えてきた。また、私を囲む人間が一人、また一人と増え、パーティが始まるまでの僅かな時間に質問攻めを受けた。

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