異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第57節

 ルディは森の国の農村の出身。
 ルディ自身も幼い頃は家族と共に田畑を耕して汗を流し、手入れをするために汗を流し、収穫のために汗を流す。そういった一般的な農村民だった。強いて他の村人と違うところを上げれば、ルディは村に常駐する兵士に剣の扱いを教えてもらい、いつかは首都フォレストで冒険者をやりたいと思っていがことぐらい。
 そんなある日、ルディは村から少し外れたところで日課の剣の訓練をしていた時に魔獣が村を襲った。
 村人の大半は死に絶え、生きているものも少なからず怪我をしており、五体満足なのはルディだけ。
 兵士や村人達は決死の抵抗も虚しく、村は全壊し、生きている者に明日はなかった。
 ルディの家族も見るも無残な姿で発見され、ルディは天涯孤独な身となる。
 身寄りのない子供が生きる術はそう多くない。人生の全てをこの村で過ごしたルディを引き取ってくれる可能性がある者は既に亡く、孤児院に引き取られることになった。
 親を亡くし、生活が一変したルディにとってその変化は受け入れ難く、酷く荒れた時期もあったそうだ。それでも、ルディが唯一素直に話せる相手が剣を教えてくれた元兵士だった。
 その兵士は村が魔獣に襲われた時、魔獣と戦った結果、左手に深い傷を負って麻痺し、右手の指も魔獣に食われ、顔の左半面のほとんどを覆う程に深い爪痕が残った。
 それでも何とか生き残った彼こそがルディを孤児院に送り届けたのだった。
 ルディは一変した生活の中で、唯一村での暮らしと共通しているのが剣を振ることだけだった。
 ルディは毎日剣を振っては村での暮らしをいつまでも思い返していた。
 そんなある日、元兵士が死んだという凶報を聞いた。ルディにとっていつかは来るだろうと思っていた凶報だ。日が経つにつれ、痩せていく彼を見ていたからこそ、そこまでの驚きはなかった。
 それでも悲しみを覚えないわけではなかった。なにせ、村での生活を思い返すように話せる唯一の相手だったからだ。
 そんな彼を失ったルディは更に深い孤独を感じた。そして、ルディが冒険者ギルドの扉を叩くのにそんなに時間はかからなかった。


 それがルディが語ったルディが冒険者になるまでの身の上話だ。
 故に、ルディは剣を振るう。既に村は廃村となり、田畑は荒れ、今では誰も住んでいない土地がそこにあるだけ。それでも、剣を振るうときだけは在りし日の村の姿とその村で過ごした時間を思い出す。

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