異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第55節

 二人は武器を手にし、街の外に出る。
 二人の獲物は互いに片手剣。冒険者ならば盾を持ってもおかしくないが、今回は私の護衛という事もあり、あくまで護衛中の武装という前提での模擬戦をするようだ。模擬戦と言っても訓練用の木剣等ではなく真剣。加減を間違えれば怪我もすれば、命も落とす。


「まずは純粋な剣の腕を見せてもらおうか」


「はい! よろしくお願いします!」


 ルディは片手剣を両手持ちで正眼に構え、対するフランさんは刀身を自らの身体より後ろに構える。この構え一つとってみても、戦い方の違いが分かる。
 素人考えだろうが、ルディは基本に忠実な構え。対人戦における剣術の構えとして攻守共にバランスの良いこの構えを扱う者は多い。それに対し、フランさんの構えはその真逆。自らの身体を晒す形となり、この構えをする者は多くない。しかし、時折剣術に優れた人間がこの構えを見せることがあり、相手は攻めあぐねる姿を見たことがある。
 事実、対峙する二人だが構えたまま動かない。
 ルディが動こうとした予備動作に合わせ、フランさんが手元を動かしてチラチラと刀身をルディに見せるようなフェイントを仕掛ける。するとルディは思い切って前に出ることができないでいる。
 フランさんの見切りと剣の速さならば、ルディが間合いに入ってくる直前に剣先をルディに押し付けることだってできるだろう。魔術的な身体強化を抜きにしての純粋な剣の腕の違いだ。
 ルディは突っ込む形での先制攻撃を諦めたのか、摺り足で間合いを詰める。それに呼応し、フランさんもまた合わせたように間合いを詰め、互いの間合いが交わった刹那、金属同士がぶつかり合う音と同時にフランさんが一歩深く間合いを詰めた姿があった。
 正眼で構えていたはずのルディは剣を天に向けた間抜けな姿をしている。それがフランさんの一撃で浮かせられたと気が付くのに時間はかからなかった。どこからでも打ってくださいといった隙だらけの姿だが、フランさんはそこを攻めなかった。


「悪くない」


 フランさんはそういって剣を仕舞った。


「フランさん、ルディはどうですか?」


「剣の腕としては山を一つ越えた所ですね。死線は潜ってませんが、苦労を積み重ねていることはよく分かりました。それと、危険察知の能力は優れてますよ。目の運びからして、注意しなければならない所はしっかり見極めていました。それから今の一撃、もし剣を手放していれば護衛として雇わない方がいいとハリソンさんに言うつもりでしたが、そうする必要もありませんね。しっかりと剣を振るっているからこそ、今の一撃を受けても剣を握っていられたと私は感じました」


「それは良かった。一時的とはいえフランさんにはルディさんとコンビを組んでもらおうと思っていましたので」


「ロウ様! 俺、赤き獣さんと仕事できるんですよね!?」


「はい。別にテストをしたつもりもありませんでしたが、合格と言っておきましょう」


「やった!」


 私は喜ぶルディを微笑ましく思いながら木々の間から見える陽の光が傾いてきたことに気が付いた。今から戻ればいい時間だ。


「ルディ、夕食は私達と一緒に食べませんか?」


「いいんですか?」


「はい。とても料理の美味い仲間がいるんですよ」

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