異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第53節

 翌日。
 来客もない静かな朝を迎え、アンバーの手料理を楽しんだ後、イゴールとルディの二人に会いに行った。
 まずはイゴール。
 イゴールは商談の兼ね合いもあり、何人かの貴族にアプローチをしてくれたらしい。和の国の特産品ということで方々にお菓子やお酒を配ってみたらしく、どこも喰い付きが良かったらしい。特に甘い物が好きなご子息をお持ちの貴族からはお菓子はとても喜ばれたそうだ。しかし、その特産品の供給も不安定であることを伝えると、どうすれば安定的な供給が確保できるのかという少し踏み入った話になった。イゴールとしては半分雑談のつもりだったようだが、貴族側の乗り気な姿勢にはイゴール自身も驚いたほどだ。
 イゴールの感触から言えば、森の国の貴族達は和の国について非常に興味を持っているらしい。イゴールは同業者にも少し話を聞いてみると、その傾向は他国でも同様のようであり、山の国、湖の国でも和の国は噂の中心であるらしい。
 イゴールは貴族達に、和の国の使者が森の国に訪れており、同盟を結ぼうとしている噂を伝えたらしい。その裏付けとして見慣れぬお菓子やお酒はその使者が換金のために商会で売った物だという物語を語ったそうだ。嘘も方便だ。
 結果から言えば、どの貴族も和の国との同盟は望ましいと思っており、和の国の特産品も安定的に手に入るに越したことはないと思っているが、一番重要視しているのは唯一魔王と渡り合える戦闘能力にあるそうだ。どれほど訓練した人間でも、どれほど才能に溢れた人間でも魔王には勝てないというのが常識。その常識を覆せるのは常識外の存在だ。カズキ様という存在は和の国の王であると同時に、魔王に対する武器や兵器という見方をする貴族達は少なくないという事か。
 イゴールに礼を言って今度はルディに会うことにした。特にルディは戦力として見ているのでフランさんと面識があった方が良いだろうというのが私の考えだ。
 まずはルディから情報収集の結果を聞いてみた。ルディの兄貴分である元冒険者達の話だ。
 どうやら、南の森に関する調査に動く貴族は数人程度というのがルディの談だ。
 情報の裏付けもなく、降って湧いた話だ。皆が飛びつくという分けでもないというのがルディの感触らしい。
 更に踏み入った話だが、数週間前までは魔獣の討伐の依頼が多く、今は少なくなっているという話だったが、南の森には多くの魔獣がいるそうだ。元々、切り開いた場所ではなく、村がある訳でもないためそこまで足を伸ばす者達がいなかったが、南の森を探索した貴族の私兵となった元冒険者が掴んだ情報だそうだ。以前と現在の比較こそできないものの、姿を見せなくなった魔獣がどこにいったのかという話は全てが討伐されたというよりも、南の森に居場所を移したという方が納得できるだろう。
 また、ヨハンに関しての情報だが長身でスキンヘッドのシーク人は見覚えが無いらしい。
 情報からして、ヨハンは秘宝の探索には狩りだされていないようだ。

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