異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第51節

 キャス王女の話は私にとって望ましい物だった。
 和の国を宣伝しつつ、その貴族の護衛も確認できる場というのはとても貴重な場だ。まさか、あのフォレスト王にここまで配慮して頂けるとは思っていなかった。
 パーティーまでの猶予の時間は今日、明日、明後日の午前中ぐらいか。それまでに根回しと準備は十全に行わなければならない。そういった点で言えば、昨日イゴールさんとルディの協力を得られたことは大きい。
 当面の目標が分かりやすくなったため、私としても動きやすい。


 キャス王女をお見送りし、その後の計画を簡単に頭の中で描く。
 今、私の仲間はフランさんとアンバー、協力者はイゴールさんとルディがいる。
 イゴールには貴族への根回し、ルディには情報収集を依頼しているため私が逐次指示をしなくて済む。フランさんとアンバーにはどう動いてもらうのが良いか少し考えた。
 私は縁のある貴族を訪問しようかと思っているため、フランさんに同行してもらうとしよう。アンバーにはカズキ様から教わったという異世界の料理を作ってもらうとしよう。幸い、調味料の類は何故かアンバーが個人的にこちらに持ってきている。それもカズキ様に無断で。
 カズキ様はアンバーに甘い所もあるが、これ幸いにと使わせてもらう事にしよう。


 そうと決まれば後は動くのみである。
 まず、アンバーに料理の説明をし、渋々ながら了承してくれた。ただし、自分の好きな料理しか作らない、そして食材費をケチらないという条件付きだが、アンバーは自分のための美味しい料理に関しては妥協しない所もあるため、その方が良いかと思いその条件を飲んだ。食材費に関しても初めからケチるつもりはなかった。
 パーティーに招待された貴族達の規模が分からないため、どれだけ準備をすればいいか分からなかったが、元々パーティーのため振る舞われる料理は初めからあちらが用意するだろう。全員の胃袋を満たす必要はないことを考えれば少量であろうとも美味しい料理であればいい。可能ならば、簡単に摘まめるような料理がいいとも伝えたら、私の気が向けばねとアンバーは笑って言った。あの顏はこちらの意を多少なりとも汲んでくれる顔だ。
 なんだかんだ、アンバーとの付き合いは長い。それこそ、初めてジェイドとアンバーが私達と暮らすようになった時からカズキ様はジェイドはロージー、アンバーは私の身の回りの世話や小間使いとして働かせようとしていた。
 その頃のアンバーは今と変わらないように見えて、実は常にジェイドの心配をしていた気がする。特に印象に残っていたのはジェイドがカズキ様に追い出された時だ。アンバーはああなることをまるで初めから知っていたかのようでいて、その上で落ち込んでいた。
 しかし今はそんな心配も無さそうだ。メイドという立場で言えば大きな態度だろうが、これを味だとカズキ様はおっしゃっている。その意味も今では分かる。話してみるとアンバーは面白い子だ。

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