異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第49節

 私が宿で休んでいるとフランさんとアンバーが戻ってきた。


「ただいま戻りました」


「おかえりなさい」


 二人に水差しを渡す。


「……ありがとうございます」


「どういたしまして」


 私はベッドに、二人は椅子に座る。


「二人共、なにか収穫はありましたか?」


「私は冒険者時代の友人をあたってみましたが、多くの方が引退さなっているようですね。一部の方は貴族の私兵として雇われたりもしているそうですが」


「そのようですね」


「なんでも、ここから南にある樹海に眠る秘宝を手に入れるために兵を強化しているとか」


「……そのような話が?」


 私の手に入れた情報と少し食い違っている。


「はい。どこから出た情報なのかは分かりませんが、どうやらカズキ様のあの魔剣のような強力な武器か防具の類が眠っているとの噂があるんですよ」


「……私は聞いた事がありませんね」


 曲がりなりにも私も元貴族。並の貴族と同程度に噂を耳にしていたはずだ。だとすると、カズキ様の存在が流布するようになってから、誰かが噂を流し始めたということか?


「私が聞いた人も詳しいことは知らないようでしたが、そういった秘宝の探索のために冒険者を私兵として雇っていると」


 それならば、普通に依頼を出せば良いはずだ。にも関わらず、私兵として雇うということは身の回りを固めたいという層と秘宝を手にしたいという層の二つが存在するということか。
 ……カズキ様が手にする魔剣カオスの件もある。眉唾の噂として聞き流すか、真剣に当たってみるか考える必要があるかもしれない。


「ありがとうございます。いい情報でした」


「そう言っていただけてよかったです。では、私は部屋に戻って待機していますので何か用があればお呼びください」


「はい。お疲れ様でした」


「…………」


 アンバーも立ち上がり、フランさんの後を付いていく。
 あとは時間を潰すだけだ。






 夕食も終え、日も沈み、人通りも少なくなった頃。
 私は宿を抜け出し、外を出歩いてみた。時折、宿のない人間が軒先で寝ている姿や、声をかけてくる娼婦を見かけたが、その他に変わった様子はない。
 もし、私に敵愾心を持っている存在がいたとして、人目のない所に私が姿を表せば何かしら反応があるのではないかと思ったが、そんなことはなかった。
 相手が慎重なのか、私の杞憂なのか分からない。ただ、分かることは姿の見えない敵の存在をしばらくは警戒し続けなければならないということは分かった。

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