異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第46節

 私とルディは二人で昼食をとるため店に入る。


「ルディは今でも冒険者を?」


「はい。仲間の何人かは貴族に雇われてしまって、チームメンバーは減ってしまったんですけどね」


 どうやらここでも冒険者の引き抜きはあるらしい。


「最近は多いらしいね。冒険者の引き抜き。魔王が陽の国を占領したって話が広まったあたりからだって?」


「そうなんですよ。実力のある冒険者がどんどん居なくなって、ギルドに所属していたメンバーも三分の一は減ったって話もありますし」


 冒険者ギルドにとって冒険者が減る、それも実力のある冒険者が減るというのはとても苦しい話だろう。冒険者ギルドの収入は冒険者の紹介や依頼の斡旋といった手数料、そして冒険者が店を利用する際の食事や宿泊費が主だ。ギルドにとって冒険者とは従業員でありお客でもある。それが引き抜かれたのでは大きな痛手となって当然だ。三分の一が減り、実力者から率先して引き抜いたと慣れば収入は半減といってもいいかもしれない。


「最近は依頼の方も減ってるって聞いたけど、食い扶持は稼げてるんですか?」


「そうですね。良くも悪くも依頼とギルドのメンバーが減ったので、結果的にバランスは取れた形となりました。一時期のような魔獣討伐の依頼の数は減りましたし、全体を通して見ても危険な依頼が減った感じですかね」


 カズキ様の行動の影響はここにまで影響を及ぼしているらしい。
 カズキ様は陽の国に限らず、森の国、そしておそらく山の国や湖の国にも影響を与えている。
 本人にどれだけの自覚があるか分からないが、良くも悪くも世界を相手にできるだけの力を持っているのだ。
 世界の味方となるか、敵となるか。
 カズキ様の素性を知ってしまった今、カズキ様が当たり前のようにいつまでも私達の味方である確証はない。なぜならば、カズキ様はこちらの世界の人間ではなく、魔族への憎悪もない。
 ただ、初めに出会ったのが私達だったから私達に手を貸してくれた。
 もし、カズキ様が魔族と手を結んでいた場合、私達はこのような平穏な日常を遅れていなかったかもしれない。そう考えることがたまにある。そして、カズキ様を畏れるのだ。


「ルディは魔王殺しについてどう思う?」


「魔王殺しですか? そうですね……噂ばかりでよく分からないというのが本当の所ですね。一人で一万の魔族の軍勢を討滅しただとか、占拠された王城に単身で乗り込んで魔王を討滅しただとか」


「前者は本当だよ。後者の方は単身って所は間違いだけど」


「ロウ様はご存知なんですか? 魔王殺しについて」


「実をいうと、今の私は貴族のハリソン・ロウではなくて、その魔王殺しの張本人、カンザキ・カズキ様の部下なんです」


「ああ、確か魔王殺しの名前はそんな名前でした。確か、黒髪の若い男のアベル人だとか」


「そうですね。その情報で間違っていません」


 正確には異世界のニホン人という人種らしいが、容姿はアベル人に近い。


「……ということはロウ様がここにいるのも、その魔王殺しの命令で?」


「そうですね……」


 そこでふと思った。
 ルディは冒険者であり、依頼をすれば動いてくれる人間だ。実力もフランには及ばなくとも並の冒険者よりは実力があり、その社交性から顔も利く。
 なにより、しばらく森の国を離れていた私より世情に詳しいだろう。


「ルディは今は仕事を抱えていますか?」


「先ほど依頼を報告してきたところなので、抱えてはいませんよ」


 これは好都合。


「では、私からルディに依頼をしてもいいでしょうか?」


「いいですよ。ロウ様の依頼とあれば私は断りませんから」

「異能力で異世界充実 ―非現実の扉―」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く