異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第45節

 商会を後にし、街を散策する。
 昔はアイリスを連れ、街を見て回っては服やお菓子を買ってあげていた。
 そういえば、あの頃のアイリスは蜂蜜が好きだったな。
 森の国は自然豊かな国であり、一部の村では養蜂によって蜂蜜を特産品とする所もある。その蜂蜜を練り込んだパンは普通のパンに比べ高額ながらも大人気だった。
 時折街に訪れては小さなアイリスは蜂蜜パンが売り切れと知ると、目に涙を浮かべながら私の裾を引っ張っていたことがあったな。
 それがきっかけで数少ないながらも私の領地に養蜂家を招いて少量ながら蜂蜜を採取していたか。あの時はロージーにアイリスを甘やかしているのではと軽い小言を言われたが、ロージー自身も蜂蜜パンは好きらしくそれ以上は言われなかったか。
 今のアイリスは甘い物に不自由はしていない。しかし、今のアイリスも蜂蜜が好きだろう。
 店売りされている壺に入ったハチミツを手にする。
 小さい壺で銀貨三枚だ。少し高いが、アイリスにお土産として買って帰るのも悪くない。
 それも全てが終わってからだ。


 次に目に入ったのが冒険者ギルドだ。
 私もこのギルドを何度か利用したことがある。
 私は私兵を持っていたがが、基本的に私兵私達貴族の身辺警護、及び領地の治安維持に従事しているため他の仕事に人員は割けない。そういう時に冒険者ギルドは便利だ。
 魔術の研究資料を求め、依頼を出しては依頼品を手にして冒険者がやってくるのを首を長くして待っていた思いがある。依頼を達成してくれた冒険者にはささやかな酒宴を開くこともあった。そういう時、アイリスは冒険者に色んな話をせがんでいた。
 冒険者は本当に色々な仕事に携わっているため、話題が尽きることはない。酒を飲んだ冒険者は持ち前の陽気さも相まって、とても楽しそうに話してくれる。


 そんな昔の事を思い出していると、私の顔を見るなり駆け寄ってきた男を見つけた。


「ロウ様! ロウ様ですよね!?」


「久しぶりだね。ルディ」


 ルディは私の依頼を請け負ってくれた冒険者の一人だ。年は若く、実力は中堅。トール人にしては剣と槍の扱いに優れ、魔術の適性も低くはない。一人で魔獣に囲まれても生き延びることができる程度の実力だと言っていたことがあった。


「お久しぶりです。ロウ様、なにやら色々と噂が流れていましたが、その様子だと何事もなかったようで安心しました」


「何事かはあったんだけどね。丁度良い、少し話さないか?」


「はい。久しぶりにロウ様とお話ししたいです」


 このルディは人懐っこく、冒険者にしては警戒心をあまり見せない。見せないだけできちんと警戒はしているのだろう。でないと、冒険者なんて簡単に死んでしまう職業なのだから。

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