異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第44節

「根回し……ですか?」


「はい。その件でイゴールさんにご相談です」


 先ほどのアーモンドチョコレートに対しての反応から見て、感触はある。


「私はカズキ様の下で働き、今は使者としてフォレスト王と交渉する立場にあります」


「根回しとはそういうことか」


「はい。交渉の内容はカズキ様の国、和の国とこの国、森の国の使者を互いの土地に滞在させる大使館を作り、互いの距離を密接にさせるというもの」


「続けてください」


「また、新しい国というものはやはり、資材が足りません。よって資材は森の国から調達したいと考えています。そこで、互いの国の距離を密接にさせることにより、あらかじめ予想される軋轢を回避したい」


「私共ラルフ商会にとって悪い話ではありませんね」


「そちらにとっても実入りは大きいはずです。付け加えるならば、先ほどのお菓子はカズキ様にしか調達できない物。和の国との関係を結べば比較的容易に手に入ります」


「資材は売れ、新しい商品まで提供してくれると」


「そういうことです。そのためにはフォレスト王とその周囲を固める貴族、彼らが和の国と手を結びたくなるよう根回しをしてもらいたい」


「……ハリソンさんの提案は魅力的だし、乗りたい気持ちはある。しかし、私の人脈ではフォレスト王に直接交渉する立場となれない」


「ならば、フォレスト王と繋がりのある人間に接触して和の国の良い所を話し、流布させるのです」


「……それぐらいならば可能か」


「そのためにこういった品々もご用意しました。これを元手に他の商人に話してみてください」


 私は用意していた菓子類や酒類をいくつかイゴールに渡した。


「私はカズキ様の命により動き、そのための活動資金も預かっています。この話に乗っていただけるのならば金貨一枚、交渉が上手くいった暁にはもう一枚支払いましょう」


「美味い話すぎるな。何か裏があるんじゃないか?」


「……そうですね。普通なら、何か裏があると思われても仕方ありません」


 イゴールから指摘されて改めて思った。私は随分とカズキ様の影響を受けているらしい。あの人は裏なんて無く、美味い話は本当にうまい話なのだ。


「きっと、私の主の影響でしょう」


「……もし、そうだったら商売人には向いてないかもしれませんね」


「かもしれません。カズキ様のお力があればその気になればオルコット商会以上の商会を作ることもできるでしょう」


 私は思わず笑ってしまった。


「では、イゴールさん。お願いしますね」


「任されました」

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