異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第42節

「ハリソンさん、起きてください」


 少女の声と眩しい日差し。
 ゆっくりと覚醒する意識。


「おはよう。アンバー」


 見慣れぬ間取りの部屋で昨日の出来事を思い出す。
 酒場で情報収集をして飲みすぎたようだ。
 起に来てくれたのはアンバーだけでなくフランも一緒らしい。扉を背にして腕組をしている。


「ハリソンさん。来客だ」


「来客?」


「キャス・フォレストだ。今は私が借りている部屋で待ってもらっている」


「分かった。すぐ行こう」


 フォレスト王が追って知らせを寄越すとは言っていたが、こんなにも早く、しかもキャス王女が来るとは夢にも思わなかった。
 昨日は着替えもせず寝たため、衣装が着崩れてはいるが仕方がない。簡単に身なりだけ整え、フランとアンバーが借りている部屋に向かう。


「お待たせしました。キャス王女」


 キャス王女は椅子に座って私を待っていた。


「いいのです」


「しかし、キャス王女自らご足労なさるとはどうなさいましたか?」


 私はキャス王女と面と向かう位置に椅子を動かし座る。


「大使館の件、父上は提案そのものは受け入れる余地はあるとのことです」


「左様ですか」


「しかし、即決はできないとも」


「その理由は?」


「父上はカズキ王にお会いし、その人柄を見て決めたいと」


「カズキ様にですか」


「ええ」


「…………」


 確かにフォレスト王の気持ちもわかる。手を結ぶのであれば、互の国主が面を向かい合わせ、信頼を勝ち得てこそこの申し出は受け入れられるものだろう。
 ただし、カズキ様は内政に掛かりきりであり、そもそも私を森の国へ送り出すための口実として使者の役目をいただいている。ここで私が仕事をしなければ、ただの伝書鳩と変わらない。


「カズキ様はまず初めに森の国との関係を良好にしたいという思いがあります。なぜならば、カズキ様は私の出身が森の国であることを存じており、私の身を慮ってのことなのです」


「カズキ王がハリソンさんを重用していることは知っています。しかし、それがどうかしましたか?」


「今回、和の国と森の国との国交に関して私はカズキ様より一任されています」


「…………」


「カズキ様はあまり執着されない方。もし、この話が破談になれば次は山の国か湖の国かという話になります。幸い、私の妻はタイン人。そして、今は私の護衛として連れているのは炎姫の二つ名を持つシーク人。カズキ様は特定の種族にこだわらず良縁を結ぼうとします」


「この話が破談になっても他をあたると」


「カズキ様がはっきりそう仰ったわけではありませんし、森の国は和の国にとって友好国であって欲しいと願っているはずです。だからこそ、どの国よりも先んじて森の国へ私を送ったと思って頂ければ」


「ともすれば、カズキ様はどうしてこちらにいらっしゃらないのですか?」


「カズキ様は国を立ち上げまだ間もありません。今は内政にご尽力なさっています。国王は自国を第一に考えるのは当然。そうですよね」


「……そうですね」


「言い換えれば、第二に森の国を考えたとも言えます」


「……だから例の話を受け入れろと」


「受け入れろだなんてとんでもない。ただ、互いの関係がより良くなる方法の一つとして提案なさっているのです」


「……いいでしょう。『カズキ王は隣国の中で森の国を第一に考えている』と伝えましょう」


「ありがとうございます」


「……それと伺いたいことがもう一つ。こちらは個人的な用件です。これを尋ねるために私自らここへ足を運んだといっても過言ではありません」


「なんでしょうか?」


「和の国より贈られたあのお菓子はどうすれば手に入る?」

「異能力で異世界充実 ―非現実の扉―」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く