異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第41節

 酒場で聞いた情報を統合し、そこから推測してみた。
 どうやら、魔王の登場と侵略戦争は各国に大きな影響を与え、軍拡に繋がっているようだ。しかも、既に陽の国が落とされたという報告から、即戦力を求める者達が多く、腕利きの傭兵や冒険者をスカウトしているらしい。
 カズキ様が魔人や魔獣を根こそぎ倒してしまったため、魔獣討伐の依頼も減り、冒険者達の身入りも減ったことで貴族連中に雇用されていく者が多いらしい。
 冒険者稼業に比べ、一攫千金とはいかないが、それでも安定した収入がある利点もあるため夢を見る者と現実を見る者に別れたと見るべきか。
 今では目聡い者達がスカウト専門のチームを作り、貴族連中に腕利きの冒険者や傭兵を紹介するという商売までできているらしいが、便乗した者たちは腕が立つだけの素性の知れない人間まで紹介するという悪評もあるらしい。機を見るに敏とは言うが、商売根性旺盛である。


 おそらく、ヨハンはそのスカウトによって貴族か王族に紹介されている可能性は高い。奴は間違いなく腕は立つ。もし、スカウトに引っかからなくても今の情勢を考えれば、ヨハンの腕を欲しがる連中は少なくない。
 髪を剃った風貌はかつてのヨハンとは異なっている。一見すればただのシーク人にしか見えないのだから顔見知りがいるであろう森の国でも問題なく動けるはずだ。ヨハンをヨハンだと区別できるのは私とロージー、アイリスぐらいだろう。


 では、ヨハンが誰かに雇われたとしよう。その場合、どうやってヨハンを探せばいいだろうか。まさか、貴族一人一人を尋ねるわけにもいなかい。
 ……いや、ヨハンを雇った貴族がいるとする。その貴族はヨハンをどう扱うだろうか? ヨハンではなく腕利きの私兵として見れば、貴族は安心を得るために身近に控えさせるだろう。であれば、貴族が一箇所に集まるような場があれば貴族を一人一人尋ねる必要はない。
 では、どうすればそのような場を設けることができるのか。ここは森の国であり、私はパーティーを開くような立場でない。






 どうやら酔いが回ったらしい。考え込み、ペースを考えずに飲みすぎた。
 鼓動は早鐘を打ち、瞼が重い。このまま横になり眠りたい気分だ。
 私はフランとアンバーに支えられ、宿になんとか辿り着く。着替えをすることすら億劫でそのままベッドに倒れこみ、思考の渦に囚われ、その果てに私は思った。
 明日考えればいいか。

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