異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第40節

 謁見を終え、宿に戻った私達。


「ハリソンさん。フォレスト王は誰に対してもあのような態度なんですか?」


「フォレスト王はもっと穏和な方ですよ。だからこそ、あの態度で済ませてくれているんです」


 王が激しい性格ならば、私は既に打ち首にされていてもおかしくはない。だから、私はフォレスト王には感謝している。


「それより、情報収集を始めましょう」


「まずはどこから手をつける?」


「そうですね。アンバーならどこに行きますか?」


「……情報が集まるのは人が集まる場所。酒場なら口の軽い人達が集まっているってレオ様が言ってた」


「確かにその通りだ。では酒場に向かい、ついでに夕食も済ませてしまおう」


 外から来た人間向けに宿の近くに酒場がある。冒険者ギルドに所属する冒険者達ももっぱらここを利用し、各地の冒険者が集うため話題には事欠かないだろう。
 向かってみると木造の酒場には多くの客が訪れており、繁盛しているようだ。
 ほとんど埋まってるテーブルの中、唯一の空席に腰掛ける。
 私達は料理を注文して客を見渡す。


「おや、あまり見ない顔だね」


 声をかけてきたのはこの店の女給だった。


「ええ。陽の国からやってきました」


「また遠いところからわざわざ」


「へぇお前さん。陽の国から来たのかい?」


 急に話しかけてきたのは隣のテーブルの男性客だった。


「なら、例の魔王殺しも見たことがあるか?」


 急に話を振られ驚いた。


「え、ええ。ありますよ」


「おお! 話を聞かせてくれよ!!」


 男の声は店内に響き、興味を持った人達が何事かとこちらに歩み寄ってくる。


「えーっと、魔王殺しですか」


「あ。魔王殺しは若い男のアベル人だって聞いたんだが、本当なのか?」


「そうですね。黒い髪に白い肌、年齢は二十代半ばの男性のアベル人でしたよ」


 本当は日本人という私達とも違う人種らしい。


「ほらな! 俺が聞いた噂は本当だったんだって!」


「くそう……」


 男は友人らしき男から銀貨を数枚受け取っていた。


「皆さん、例の魔王殺しにご興味があるのですか?」


「そりゃあな。陽の国が落とされて、今度はどこの国が落とされるかって不安になってたら、一週間もしたら解放されたって聞いたんだ」


 城を落とされて一週間も経たずに解放されたはずだが、そこは情報が伝わるための間が開いたためだろう。


「まぁおかげで最近は魔獣討伐の依頼が減って仕事が不足してきたが、代わりに貴族連中は私兵の増強のために俺達冒険者にまで声をかけてきてるんだ。懸命な奴は冒険者を廃業してさっさと私兵になっちまった」


 ……今の社会情勢はそんな動きを見せているのですか。

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