異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第39節

 懐かしい。
 森の国の首都、フォレストはより濃い緑に囲まれ、漂う空気には豊富な魔力が宿っている。
 街に入る時に入念な検査を受け、特に持ち込んだ物資に関して多くの質問が投げつけられた。私自身、全ての品を正確には理解していないが、食料や酒類等はなんとか私でも説明できた。
 憲兵は少し怪しみながらも、危険はないと判断し、私達を入れてくれた。
 しばらく訪れていなかったが、フォレストの街並みあまり変化はしていない。
 街中を馬車で進み、宿をとってから城へ向かう。
 新たな国の使者と言えば怪しまれても仕方がないだろうが、カズキ様の名前はこの地にも伝わっているようで、身体検査を受けた上で城に上がることを許可された。
 森の国はその名の通り、建造物は全て木造であるが、唯一の例外として王城のみ石造である。
 森の国では木材は多く取れるが、石材はあまり取れない。そのため、良質な石材はほぼ輸入に頼っている。


 私達は城に上がり、手で持てる品だけを手にして上がる。
 今回は謁見のため、そこまで時間は取らせてもらえないだろうが、この品で興味を引ければ会談にこぎつけるのはそこまで難しくないだろう。
 しばらく待機し、謁見の順番が来る。
 兵士の後に続いて謁見の間に向かう。


「来たか」


 年老いた王は玉座に座って私に鋭い眼光を向けてきた。


「おひさしぶりです。フォレスト王」


「…………」


 当たり前だが、フォレスト王は私を許してはいない。自分の息子を殺されたのだから。


「本日は――」


「口上はいい。用件を言え」


「……和の国の使者として、和の国と森の国の国交を深めたく思い参上いたしました」


「例の魔王殺しのか」


「左様でございます」


「いくらか話は聞いている。変わった男らしいな」


「私達の目から見れば、誰にとってもそう映るに違いありません」


「そうだろうな。お前を部下にするぐらいだ」


「…………」


「国交を深めたいというが、具体的にはどういう話だ?」


「カズキ様より親書を預かっております。こちらを」


 私が懐から親書を取り出し、兵士に渡す。兵士は見慣れぬ印章に首をかしげながらもフォレスト王へと差し出した。
 フォレスト王は封を切り、親書に目を通す。


「……内容から見て、この大使館を置くというのがお前の主の提案か」


「はい。互の文化をより深く理解するためにも、その地で同じく暮らすのが良い。そうカズキ様はおっしゃっております」


「……この提案、そのカズキ王は和の国に森の国の大使館を作ることも考えているのか?」


「はい。両国に大使館を置くことこそ、両国の深い国交の証かと」


「……良かろう。いますぐ、とはいかないが良い提案だ」


「ありがとうございます」


「他に用件は?」


「これを」


 献上品として持ち込んだお菓子やお酒といった品々をフランが兵士に渡す。


「それはカズキ様からフォレスト王へ、和の国を知ってもらう一環として差し上げたいとのことです」


「この黒い大きな豆みたいなものは?」


「チョコレートという菓子です」


 フォレスト王は露骨に怪しみ、近くの兵士に一粒食べさせる。兵士はその味に驚いた。


「…………」


 ならばとフォレスト王もチョコレートを口にする。


「甘いな」


「菓子ですから」


 フォレスト王は菓子を全て兵士に持たせる。


「キャスに」


「承りました」


 兵士は菓子を手にして退室する。


「話は分かった。ロウ、しばらくはこちらに滞在するのだな?」


「そのつもりです」


「お前の主のために時間を作る。後で追って使いを出そう」


「ありがとうございます」

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