異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第38節

 私とフランさんとアンバーの三人旅。
 森の国までの旅程ではいくつか宿場町があるため全ての日程で野宿をする必要はなく、馬車を停め、積荷を盗まれなければ憂いのない旅路といえよう。
 そして、長い旅程の中で数少ない楽しみがアンバーの手料理だったりする。
 アンバーはカズキ様の許可を得て、各種調味料や香辛料。そういった物を私物化し、持ち込んできている。そして、カズキ様が持ち込んだそれらとアンバーの腕が合わさると王族でも食べられないかもしれないほどの料理になるのだ。つまり、金を積んでも食べられないということだ。
 カズキ様は自身の世界の料理よりもアンバーが作る料理の方が好きだという程なので、アンバーの腕は突出している。
 以前、カズキ様の国の話の中で食べ物の話を聞いた時には、これほどまでに食を追求する文化があるだろうかと思ったほど。少なくとも私が知る限り、四大国にはない食文化だ。
 私の思いはフランさんも同じかそれ以上のようで、アンバーが作る料理を余すことなく全て食し、おかわりを要求するほどだ。そのためか、食材が許す限りにおいてアンバーは四食分を作るようにしていることを私は知っている。
 そして、アンバーが食後のお菓子を楽しみにしており、一日二つというカズキ様からの誓約を苦々しく思いながらも守っているのが面白い。
 一個、また一個と箱の中身が減るたびに表情が悲しいものになっていく。
 あそこまで食べ物に対して思い入れがあるこそ、あれだけ美味しい料理が作れるのかもしれない。


 そういった少し面白い一面を見ながら私達は森の国に向かった。
 森の国の領地はほとんどが森林に覆われ、肥沃な大地に雄々しくそびえ立つ樹木が多く見られる。
 私が父から聞いた話ではトール人は豊富な魔力を求め、この地に根を下ろしたというのが有力な説らしい。魔力は生命、活力の源であり、その魔力が豊富だからこそこれだけの広い森林があるのだ。
 トール人は他の人種に比べ、魔力を多く持ち、魔術の扱いに長けてはいるが魔力の回復量というのはそこまで大きな差はない。なので、井戸の中の水量は異なっても地下水脈から湧き出る水の量は同じなのだ。
 しかし、魔力が濃い場所ならば回復する効率は高い。魔力は食事一つ、呼吸一つで回復するのだ。より濃い魔力の空気を吸えばそれだけ回復も早いというもの。
 ゆえに森の国に療養と称し、訪れるものもいるらしい。森林を歩き、息をすると不思議と傷病が和らぐという話もあるぐらいだ。
 そんな懐かしい故郷の地を進み、森の国の首都。フォレストを目前にするのだった。

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