異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第37節

 森の国への使者として準備を着々と進める。
 馬車を購入し、カズキ様から多くの品々を預かり、昨今の森の国に関する情報を集めたり。
 そして、カズキ様は約束通り私の護衛として精鋭をご用意してくれた。


「ハリソンさん。お久しぶりです」


 炎姫の二つ名を持つ、シーク人の戦士。フランさんだ。


「お久しぶりです。今日はお越しいただいてすみません」


 フランさんはカズキ様から事情は聞いているようで一から説明する必要は無かった。


「出立はいつ?」


「明日の朝にでも」


「分かった」


 フランさんは以前に比べ、とても頼りがいのある雰囲気を持っていた。
 アーサー親衛隊で訓練したとは聞いていたが、数週間という短期間であれほど纏う雰囲気の厚みが変わる物かと少しばかり驚いた。
 元々武芸に秀で、魔術の素養も人並み以上にある。
 私の護衛としてこれ以上の人事はないだろう。






 翌日。私とフランさんは馬車に乗り込み、私の小間使いとしてアンバーも同行する事になった。
 私とフランさん多くの品物を積載した荷台に少しのスペースを設けて座り、御者台にはアンバーが座る。
 これから一週間以上ともなる旅程になるだろうが、心配はない。
 保存の利く食糧もあれば、盗賊に襲われても余裕で返り討ちにできるだけの戦力があり、旅路は私が見知った土地を通るのだ。
 懐に仕舞った親書を肌身離さず持ち、カズキ様のご意向に相違がない事を何度も反芻する。


 ヒノモトを発つ時、見送りに多くの方々が来てくれた。
 カズキ様、ロージー、アイリス、ジェイド、クリスさん、オセロ子爵、それにこの国で何度か交流した商会の方々。


「ハリソン。自分の務めを果たせ。優先順位はお前に任せる。面倒事になりそうだったら例の手段で知らせてくれ」


「はい。お任せください」


「フラン、ハリソンの護衛をしっかり頼むぞ。お前の戦力は必ずハリソンの役に立つ。それは俺にとっても助けになる事だ。それと、一応は使者の護衛だ。宴の席では例の服を着てくれ」


「……あの服は少し恥ずかしいのですが……」


「馬鹿言え。向こうの世界からわざわざお前に似合う服を選んできたんだ。着なかったら罰ゲームだからな」


 カズキ様は時々子供っぽい命令をしてくる。しかしそれも愛嬌というものだろう。


「アンバー、お前も頑張れよ。さすがにハリソンの護衛まではしろとは言わないけど、お前の力なら自衛できると思ってる。それとチョコレートは一日二箱までだ。歯磨きは忘れるなよ」


「……分かってるわ」


 私達はいろんな人に見送られ、ヒノモトを発つ。


「お父様!」


 荷台から顔を出して声の主を見る。


「早く帰ってきてくださいね!」


 愛娘にそう言われ、帰らない父親は居ないだろう。


「すぐ帰ってくる!」

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