異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第36節

 私はアイリスとの時間を惜しんだが、それでも私にはしなければならないことがある。
 カズキ様の命のため、森の国の使者としての親書を作成しなければならない。
 カズキ様は会話はできるが、読み書きができないため、こういった仕事は私やロージーが務めている。
 親書の内容はカズキ様の意を汲み、和の国の名にちなんで種族の垣根を越え、諸外国と共に繁栄を目指すという内容。それに伴い、森の国に大使館を用意したいという旨も伝える。
 私達の国家間では対話を必要とした時、その時その時で使者を送るのが常だが、カズキ様の国では大使館と呼ばれる役所を外国に設け、その役所を通じて外交を行うらしい。
 もちろん、森の国が認可をしなければ設立することもできないが、認可を受ければ国家間の協調を強調することもできる。いずれは山の国や湖の国にも大使館を置くこととなるだろうが、今回は森の国との対話による事例を作り、その後に他国への水平展開を目指す。というのがカズキ様の考えらしい。これは四大国だけではなく、方々の小国までその網を広げるつもりらしい。
 どうやらカズキ様の世界は文明レベルが私達よりもずっと先を行っていることが伺えた。
 カズキ様曰く、カズキ様自身はただの平民に過ぎず、国家間の詳しいやり取りを知っているような官職についているわけでもない。
 にも拘らず、カズキ様は外交の重要性を理解され、国内の発展を目指すだけでなく外にまで目を向け、それに対応する具体案を出し、こうして私を派遣する口実を作った。
 これだけの案が出てくるのも単に私を森の国に派遣するための口実なのだ。
 本来の目的は私の部下だったヨハンを捕える事。


 親書を書き終え、カズキ様の署名と印章を貰いに向かおうとした所、そういえばカズキ様はまだ印章をお作りになっていない事に気が付いた。
 しかし、それも杞憂だった。


「ああ、印鑑ね。認印でいいかな?」


 印章に関してカズキ様にご相談したところ、そのように言われた。
 ミトメインというのが何かは分からないが、カズキ様は印章をお持ちになっているようで用意が良い人である。
 カズキ様の国では誰もが印章を持ち、取引においての契約では欠かせない物らしく、カズキ様はハンコ文化だと言っていた。
 国民の誰もがハンコと呼ばれる印鑑を持つというのも驚いた。
 つくづく私達とカズキ様達の世界での文明の、それも国民の生活水準が異なる事に驚きの連続だ。

「異能力で異世界充実 ―非現実の扉―」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く