異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第33節

 私はロージーと別れ、愛する娘の元へと向かった。
 私の娘、アイリスはカズキ様の奴隷として寵愛を受けている。
 それは奴隷という身分では考えられない、それこそ有り得ない程にカズキ様はアイリスを大切にしていた。
 初めこそはカズキ様がアイリスを愛奴隷にするのではと危惧していたが、そんな様子もない。見方を変えれば、大事な妹を守っている兄のようにも見えなくもない程だ。
 お菓子を与え、仕事を与え、時に叱り、時に褒める。奴隷の主であるようで、家族のようでもある。
 今の私の立場では口にできないことだが、もしもアイリスを嫁がせるならばカズキ様しかいないだろうと思っている。
 しかし、当のカズキ様はアイリスを娶る気はないようだ。それどころか、多くの女性に言い寄られ、悪い気はしていないはずなのにどこかで一線を引いているようにさえ見えた。その理由が今ではなんとなく分かる。
 カズキ様と同じ国の出身だというミズキさんが理由だろう。
 カズキ様はミズキさんに接する時、少し怯えたような雰囲気を纏う時がある。簡単に言えば、顔色を伺っているのだ。
 言動こそ普通を装ってはいるが、話し終わった直後にカズキ様はミズキさんの反応を伺うことが多い。
 カズキ様は他の女性にああいった態度は見せない。例え、相手が王女であろうともだ。そう言う意味でもミズキさんはカズキ様にとって特別な存在だというのがありありと分かる。
 逆にミズキさんがカズキ様をどう思っているのか、よく分からない。
 一見、仲は良好のようだがミズキさんはミズキさんでカズキ様と一定の距離を保とうとしている。できるだけ女性らしさを見せないようにしている節がある。男女を意識させないよう、あくまで友人としての振る舞いだ。
 嫌いではないが、好きでもない。でも、意識はしている。そのように感じる。
 二人の間で何があったのかは知らないが、恐らく男女の関係だろう。
 そう推論が立てば、カズキ様がアイリスを娶らない理由もわかるし、ほかの女性に靡かない理由も分かる。
 女性が苦手なんだろう。きっかけはミズキさんに違いない。
 しかし、それが分かった所で私にはどうすることもできない。
 カズキ様が望むのであれば、私はアイリスを喜んでカズキ様に嫁がせるつもりではあるが、カズキ様がそれを望まない。それが現状だ。


 そういえば、アイリスの気持ちはどうなんだろうか。
 私はアイリスの部屋の前に立ち、ノックをして部屋に入った。

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