異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第31節

 翌日。といっても、それは異世界時間にしての翌日であり、俺にとっての体感では一分にも満たない。


「一樹、絶対に私がこっちにいる時に元の世界の時間を進めないでよね」


「分かってるって。水樹を浦島太郎にはさせないからさ」


 俺がその気になれば、水樹を百年後の世界に送ることだってできる。まぁその場合、俺も百年後の世界にしか行けないわけだけど。
 あの時計を操作できるのは俺だけであり、俺の能力を模倣している水樹でも操作はできないようだ。なんでも、水樹の能力は上位能力の模倣まではできないらしく、万能のようでいて制限は多いみたいだ。


「それにしても、一樹の能力があれば休暇なんて取り放題じゃない? 元の世界の時間を止めておけばずっと休みにだって出来るんだし」


「まぁそりゃそうなんだけどさ」


 極論を言えば、異世界と現代の時間を止めてクロックルームに引き篭れば精神と時の部屋以上に休み放題だ。しかし、現代の時間が進まないということは新作アニメが見れないというジレンマもある。
 俺が借りているオセロ子爵の屋敷の一室で水樹と話していると、そこにハリソンがやってきた。


「カズキ様、少しお時間よろしいでしょうか?」


「ああ、単に雑談してただけだから。それで、何か話?」


「私、席はずしたほうがいい?」


「まぁ居てもいいけど、暇だろうし外で仕事でもしてくる?」


「んー、そうだね。じゃあ、またあとで」


 そう言って水樹は退室し、部屋でハリソンと二人きりになる。


「それで、話って?」


「私が使者となる話ですが、必要な物を書き記しました」


 ハリソンは紙を俺に寄越す。羊皮紙などではなく、現代で一般的な紙だ。基本的に俺の身内には全員、ボールペンと紙は自由に使わせている。


「オーケー、ちょっと見せて」


 こっちの世界の文字は未だに読めないため、クララに翻訳させて読み進める。
 基本的には陽の国に居た頃に貴族たちへの贈り物としていた物が大半だ。要求している金額も安くはないが、今手持ちの金で賄える。それ以外に気になった点があった。それは護衛役を誰か用意して欲しいということだ。


「ハリソン。護衛役ってのは?」


「名目は護衛役ですが、実質戦闘員です。私とヨハンが戦ったとしても、確実に勝てるわけではありません。それに、相手がヨハン一人だとも限りません。使者という名目上、大人数を連れて行くわけにも行きませんので、手練を誰か一人」


 ハリソンが言う手練を一人。この場合、俺が切れるカードは一人しかいない。しかし、あいつは今訓練中だ。その訓練を中断させるかどうか。


「ハリソン。出発はいつにする?」


「早ければ早いほうがいいですが、カズキ様の都合のいい頃合を見て」


「まぁ早いほうがいいよな」


 例のヨハンという魔人がどういう奴か知らないが、放置していていい事は一つもない。


「分かった。お前の要求するものは全て用意しよう。金もこれを使ってくれ」


 手持ちの金から要求金額に足るだけの金を渡す。


「ありがとうございます」


「森の国との関係は良好に越したことはないからな。頑張れ」

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