異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第30節

 紅蓮との話も終わり、俺と水樹はその足で異世界に向かった。
 オセロ子爵の屋敷を拠点とし、ロージーの指揮の下で人が動き、物資の貯蔵がしばらく尽きることも無いことがロージーの口から告げられた。
 どうやら、物資が足りない足りないと思っていたのは俺が最終的なゴールを見ていたからであり、あれだけの職人を動員しても物資の消化は間に合わないらしい。
 そうすると俺にできることはなく、ただ待つばかりである。
 暇を持て余し、色んな所に顔を出すが皆は俺の命令の下で頑張って働いてくれているようで、俺が行くと手を止めさせてしまうから、結局は待っているのがいいと分かった。なんとも手持ち無沙汰である。
 このまま無為に時間を消費するのも勿体無いと思っていたところで、クロックルームの機能を思い出す。
 異世界の時間を一日だけ進めてみようかと思ったのだ。
 そこで、ふと気になることがあった。
 仮に水樹を異世界に残した状態で俺がクロックルームで時間を進めたとする。仮に一時間進めたとしよう。
 『異世界:0時』と『現代:0時』を『異世界:1時』と『現代:0時』にしたとしよう。この時、『異世界:0時~1時』の間に水樹が現代に戻ったとした時、その時に行き着く先はどこかという点だ。
 俺の直感では『異世界:0時~1時』で現代に戻った場合は『現代:0時』になるだろうと告げている。
 水樹に協力してもらい、その推測が正しいか試してみた。すると、俺の直感が正しいことが分かった。
 また、その状態から異世界に戻ってみると『異世界:1時』になることも確認できた。
 では、水樹を異世界に残して『異世界:0時』と『現代:0時』を『異世界:0時』と『現代:1時』にしたらどうなるだろうか。これも俺の直感では『異世界:0時』から『現代:1時』になると告げ、それを実証した所、これも俺の直感が正しいことが分かった。
 つまり、クロックルームは異なる世界の時間軸上の相対位置を変化させることができるということだ。
 これはクロックルームの時間軸を無視すれば、『異世界を1時間進める』=『異世界が一時間進むまで現代を停止させる』と同義である。
 そして、水樹にとっては怖い話かもしれないが、水樹が異世界にいる状態で俺が誤って現代の時間を1年進めたとしよう。そうすると、水樹が戻る先は一年後の現代になるということだ。
 異世界と現代は異なる平行な線の上の世界であり、交わることはないが時間の流れは同じだった。現に今まで異世界が一日経過すれば、現代も一日経過していた。しかし、俺の上位能力はその異なる世界線にはそれぞれ異なる時間軸があるという事が分かったのだ。その軸上を進む時間は互いに同じであり、相対位置が変わらなかったため、同じ時間軸上にいるようであったが、実は異なる時間軸上に居た。
 俺は水樹の協力を得て、色々とデータを手に入れ、推論を並べた。


 まるでSFだな。


 これ以上考えることを諦めた。俺の頭では到底結論を出せるものではない。
 能力に関してのデータをノートにまとめるだけまとめて、あとは放っておくことにした。
 とりあえず、異世界の時間を一日進ませた。

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