異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第29節

 翌日。
 またしても来客が来た。水樹だ。


「一樹。支部長が呼んでるから少し時間いいかな」


 質問口調だが半ば命令である。
 ご丁寧な事に直通のゲートを水樹の方で用意してくれたらしく、それを利用して移動する。
 向かった先は支部の中の会議室のようだった。


「やぁ、黒の剣士」


 久々に見る紅蓮の顔だ。


「ご無沙汰です」


「ああ。まぁ掛けてくれ」


 俺は椅子に腰掛け紅蓮と面と向かう形になった。水樹は俺の隣に座っている。


「さて、今日呼び出したのは君の上位能力の件についてだ」


「まぁそうですよね」


 コンコンコン。
 ドアをノックする音がし、入室してきたのはアイエフだった。


「あれ? アイエフ?」


 アイエフはお茶を持ってきたようで、俺達の目の前にそれぞれお茶を置いていき、無言で頭を下げて退室する。


「猫から聞いた話ではこの世界と異世界の間に白い部屋が出現したらしいが、間違いないかな?」


「間違いないですね」


「その部屋を経由すれば誰でもあのゲートを通じて別の場所に現れることができると」


「それは実証済みです」


 あの時、クロちゃんに試してもらったから分かっている。ちなみにゲートを潜る条件は俺と接触していることだ。


「君の上位能力に関してはまだ私の所で止めている。これを本部に連絡すれば君との約束の二週間という休暇も取り消され、すぐさま本部への出頭命令が出るだろう」


「俺の能力はそんなに危険視されるほどの物なんですか?」


「危険というよりも有益だからだ。私達が各地に支部を置いているのは各地を調査し、また早急に事にあたるためだ。そこに君の能力があれば、例えばFAXでゲートを各地に配置したとすれば、本部に居る精鋭の能力者をすぐに送り出せる。それは日本国内に留まらず、海外にすらだ」


「要は運び屋ってことですか」


「今まで君の能力は物を輸送する程度、それだけでも十分有力だが、今は人の輸送もできる。今まで人員の配置に頭を悩ませていた人事上層部が喉から手が出るほど欲している能力となるわけだ」


「まぁ俺の能力なら条件さえ整えば、距離の問題は関係ないからな」


 ちょっとコンビニに行くよりも気軽に異世界や海外にいけるんだ。


「私としては有力な人材は可能な限り近くに置きたい。しかし、君の能力を活かすには本部の方がいいのも事実だ。だから、君が休暇を終えるまでに決めようかと思う。この街に君を置くか、本部に君を引き渡すか」


「俺としてはどっちでもいいですけど。どうせ、本部に行くにしてもこっちから通うことになるでしょうし」


 もっと言えば、俺の家はあっちの世界にもあるわけだ。どこに勤めようが、距離的になんら問題はない。
 アマテラスという組織に忠誠を誓っているわけでもないし、愛着があるわけでもない。ただ、知り合いが居たから少し付き合うか程度の切っ掛け。
 組織の力を借りれば、俺一人でできなかったこともできるからこそのギブアンドテイク。俺にとって役立つ間ならば、それに見合うだけの仕事はしよう。


「休暇中に呼び寄せて悪かった。話は以上だ」

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