異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第28節

 四人で心ゆくまで寿司を堪能し、食事を終えた。
 クロちゃんは貝類が好きなようで、店内で扱う貝ネタは全て網羅。ポーちゃんは故郷であるフィンランドでサーモンをよく食べていたそうで、サーモンを多く食べていた。アイエフは偏り無く自由に食べていた。
 俺は久々の寿司ということもあり、五十皿は食べただろうか。以前の俺ならば十皿で満腹になるはずなのに今は食欲が強い。これも俺の体が色々と作り変わっている作用なのかもしれない。しかし、この食欲があるおかげで多くの寿司が食べられ、美味しい思いができたのは有難かった。
 代金は俺の金でアイエフが払ってくれた。俺自身が現金を持っているわけがないからだ。
 そのあとは各自解散。アイエフは礼だけ言って立ち去り、俺とポーちゃんは帰路に着き、途中まではクロちゃんとも一緒だった。


「……ニーサン」


 静かな家路。足音すら響く静寂にクロちゃんの声が響く。


「どうかした?」


 初秋も過ぎ、夜も深まれば寒くもある。俺達はあまり距離を開けず、詰めるように歩いていた。


「私、どうすればニーサンの役に立てるでしょうか?」


 それは悩みを打ち明ける一人の女の子の相談としては難しい内容だった。
 俺の隣で歩くポーちゃんは我関せずといった様子で自分の事は気にしないでくれといった体だ。


「十分役に立ってるよ。クロちゃんのおかげで物資の輸送は滞りなく進められたし、俺はとても助かったよ」


「……私も猫さんみたいにニーサンと一緒に向こうの世界に行きたかったです……そうすれば、もっと役に立てるかもしれないのに」


「……それは仕方ないさ……俺だって色々と試したんだ。でも、こっちの人間はあっちに行けないし、あっちの人間はこっちに来れない。今はあの白い部屋に連れて行けるようにはなったけれど、結局人間は異なる世界に行けないんだ。俺の能力以外ではね」


「…………」


「そう落ち込まないでいいんだって。そもそも、俺の役に立とうだなんて思わなくていいんだからさ」


 俺は励ますつもりでそう言葉を掛けた。


「私だって……」


 クロちゃんは絞り出すような声を出し、交差点に差し掛かったところで駆ける。


「クロちゃん!?」


 点滅する歩行者用信号。クロちゃんが渡りきる直前で赤になる。


「ニーサン! 明日もお手伝いさせてもらいますね!」


 振り返ってそれだけを言うと、再び駆け、去ってしまった。


「ポーちゃん、女心って難しいね」


「カズキ様、一応私も女なんですが」


「知ってる。わざとだ」


「…………」

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