異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第27節

 今日一日でやろうと思っていた事のほとんどを終え、後の雑事はロージーに丸投げし、俺は現代に戻った。
 アイエフやポーちゃん、クロちゃん達とたまには夕食でも一緒にしようかと倉庫に向かった。
 物資の輸送も一段落し、休憩している女性三人。女性が三人もよれば姦しいとは言うが、この三人には当てはまらなかったらしい。
 パソコンを操作しているアイエフ、書類に目を通しているポーちゃん、静かに本を読むクロちゃん。三者三様でそれぞれの時間を過ごしているようだった。


「皆、お疲れ様」


 俺の声にいち早く反応したのはクロちゃんだった。


「こんばんわ。ニーサン、あちらでの用事は終わったのですか?」


「まぁね。今日はこっちで夕食を取ろうと思ったんだけど、三人ともどうだろう? どこか美味しいお店にでもいかないか?」


 書類に目を通していたポーちゃんはその問いかけに答えた。


「いいですね。料理をする手間が省けます」


「あら、私もお邪魔しちゃっていいのかしら?」


 パソコンの操作を中断したアイエフは乗り気なように見える。


「言い方は悪いけど、お金はあるからね。一応、食事代を出すぐらいの甲斐性は見せておかないと」


「なら、私もお言葉に甘えようかしら。クロちゃんはどう? ご両親にご連絡しなくても?」


「大丈夫です。それよりアイエフさんこそ戻らなくていいんですか? 支部長が待っているのでは?」


「いいのよ。あの人は私の事を便利な小間使い位にしか思ってないんだから」


 なんだろう。アイエフとクロちゃんはあまり仲が良くないのかな。なんとなく棘を感じる。


「カズキ様。カズキ様は何が食べたいですか?」


「俺か? 別に今日は良いんだぞ。ポーちゃんが食べたい物があるなら、それがある店にするし」


「あ、私もニーサンが食べたい物が知りたいです」


「俺が食べたいもの?」


「あ、いえ。食べたい物が分かれば、調べればすぐにお店が分かるかなって」


「ああ。そういうことね」


「へぇー、二人とも黒の剣士さんの好物が知りたいわけなんだ?」


「私の場合、カズキ様の食事を作ることもあるので好物を知っていて損はないかと思いますが、今回は別ですよ。例えば私がフィンランド料理を食べたいと言ってもここらへんには無い事は知ってますから」


「私も別にニーサンの好物が知りたいわけじゃないですよ。ただ、食事代まで出していただくのに嫌いな料理が出るお店だったら、ニーサンは嫌な気持ちになるじゃないですか」


「まぁまぁいいから。それで? 黒の剣士さん……外でこの名前で呼ぶのは目立つかしらね。クロノさんは何が食べたいのかしら?」


「まぁ……俺の好物と言ったら、あれだよな……」






 一度でいいから行ってみたい。回らないお寿司屋さん。


「やっぱり、寿司だよな」


「…………」


「…………」


「クロノさんはお寿司が好きなんですか?」


「好きですよ。毎日夕食は寿司にしたいぐらい好きです」


「好きなネタは?」


「切り身なら何でも好きですけど、一番はエンガワですかね」


「エンガワですか。てっきり、サーモンやマグロかと思いました」


「ああ、昔は一番好きなネタはサーモンでしたね。あの旨味は病み付きになりますから」


 俺はアイエフと何のネタが好きなのかと談笑していると。


「ニーサンは海鮮が好きなんですか?」


 クロちゃんが急に質問してきた。


「ああ、魚は好きだよ」


「言われてみれば確かに私が作った魚料理を美味しそうに食べてましたね」


「…………」


 思い出したように肯定するポーちゃんと、何故かそこで黙るクロちゃん。


「私もお寿司は久しぶりだなぁ。これもクロノさんの下で働いているからこその役得ですね。さぁ皆んも中へ」


 アイエフが率先にして店に入る。
 こういったちょっと高めのお店はあまり入ったことがないため、臆するがアイエフはそうでもないみたいだ。少し頼もしくもある。

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