異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第26節

 さて、ハリソンの件もあるが領地経営も並行して行わなければならない。
 現代から異世界への物資の輸送。こちらはアイエフとポーちゃん、それからクロちゃんに手伝ってもらった。結局、クロちゃんは少しの間だけアルバイトという感じでやらせてくださいと申し出てきて、俺も断れなかったからだ。
 結果として、物資輸送は滞りなく進めることができ、オセロ子爵の屋敷の一角には山積みの資材が並んでいる。これを随時馬車で運びだし、家屋を建築することになる。
 今回、建設するのは安価な木造建築の平屋だ。
 街経営シミュレーションの定石で言えば、まずは下流市民を多く集め、人口を増やし、産業を発展させ、そこから中流市民を増やし、より高度な産業を発展させ、最後は上流市民を増やして更に産業を発展させる。
 発展の王道ともいえる発展である。
 この街は元々生活水準も低いわけでもないため、いきなり中流市民を増やす方策を取ってもいいんだが、クロックルームのこともあり、急ぐ必要もないだろうと結論付けしたからこその基礎固めだ。
 そして、住民を増やす上で重要な要素が税率だ。
 現状、サニングの前身のルクスはオセロ子爵の管理の下、やや高めの税率が課せられている。まずは人頭税、現代で言えば住民税に近い税制であり、町に住む者全員が支払っている。
 次に土地税。簡単に言えば、領主から借りている土地に対し、支払う税だ。この世界では未だに土地の私有化は認められておらず、あくまで領民は領主から土地を借りている。
 そして、関税だ。俺の見解としては関税は国内の産業を保護するシステムであると思っており、別段悪い事ではないが、物の出入りは滞るデメリットがある。今はとにかく物資が不足しているため、一時的にでも関税は安くして、物の出入りを多くしたい。
 税制はそう簡単に変えられるものでもないが、俺が公爵となった記念と言った名目で税制を一時的にでも下げ、領民の支持を得るのもいいだろう。
 その分、一時的に税収は減るだろうがインフラを構築し、居住スペースを多く取れば基本的に領民の数は増える。
 俺は優先順位を付けつつ、バランスが良い部分を探ることにした。そこで役立つのがオセロ子爵が付けていた帳簿だ。あれが唯一数値的データである。
 俺は自分の考えをオセロ子爵に話し、一時的減税のためのアイデアを出し合った。
 オセロ子爵は当初、俺の提案に少し驚いたようだった。
 成り上がった領主がすることと言えば、多くの場合が酒池肉林のハーレム三昧だからだ。ところが俺がする初めの仕事が減税の提案だったからだ。
 そういえば、そんな手もあったかと思ったが、酒なら現代の方が美味いし、女性を金で侍らせるのは好きじゃない。食事もアンバーやジェイドの手料理で満足している。
 だからこそ、そういった選択肢そのものが無かったのかもしれない。

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