異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第25節

「カズキ様に以前、私が爵位を失った経緯はお話しましたよね」


 微かに震えながらも、順序立てて話すあたり冷静さはあるようだ。


「ああ。お前の部下が森の国の王族を殺めて責任を取ったって話だったよな」


「はい。もう程と私の部下だった男、ヨハンを見ることはないと思っていました……」


「思っていました?」


「……今朝、ヨハンによく似た男が山の国を出るのを見たんです。髪を剃っていたので雰囲気は変わっていましたが、間違いありません」


「ヨハンが山の国に……」


 ヨハンといえば確か、シーク人とトール人のハーフのような姿をしているという話だった。外見的には褐色肌であり、見た目はかなりシーク人寄りだったか。


「あの男は森の国行きの馬車に乗り込んでいました」


「ヨハンが森の国に?」


「またヨハンが何か企んでいるかと思うと気が気ではなく……」


 ハリソンがヨハンの事を気にかけるのは当然のことだ。ハリソンからしてみれば自分から全てを奪い、家名に泥を塗り、家族さえ失う切っ掛けとなった男だ。


「ハリソンは何に迷っているんだ?」


「迷う、ですか?」


「ああ。だって、どうでもいいならそこまで動揺しないだろ?」


「…………」


「復讐をしたいのか?」


「……いいえ、違います。私は……」


「どうしたいんだ?」


「……私は、彼を止めたい。私には旧くより流れるトール人の血と森の民としての誇りがあります。彼を止めなければ、また誰かが命を落とすことになります」


「そうか」


「カズキ様?」


「止めたいなら止めればいいさ」


「それは、どういう……」


「ハリソン。お前には大使として森の国に行ってもらう」


「大使? 私がですか?」


「ああ。お前はもう森の国の地を踏むことを許された身だ。俺の、公爵の使いなら悪いようにはされないだろうし、そのまま森の国でヨハンの行方を追え」


「カズキ様? 本当にいいんですか?」


「もちろん。支度金は俺が用意するから、必要な額と必要なものを挙げておけ。全部用意してやる」


「…………」


 ハリソンは口を開けたまま放心している。


「そうだな……名目としては森の国の資材を買い取りたいでどうだ? そうだ、手土産も持たせよう。森の国には何を持っていったらいいだろうか」


「え、えーっと……」


「いや、それも後でまとめて聞こう。資材はいくらあってもいい。それに税をいくらか徴収してきたからな」


 俺はハリソンに色々と命令を与え、思案を巡らせるのだった。

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