異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第23節

 異世界に渡った俺はすぐに門の外に向かう。そこには既に筋骨隆々なシーク人が群れを成しており、列を作ることもなく、アイリ達の誘導で思い思いにバスに乗り込んでいた。


「悪い。少し遅れた」


「おはようございます。カズキ様」


 アイリ達との挨拶もそこそこに済ませ、俺も誘導係の手伝いをする。どうしても俺の身の回りの連中は見た目が小柄であり、シーク人達から舐められているのか折角の誘導も軽視されている節がある。
 こういう時にハリソンは何をしているんだと誘導をしながら探していると既にバスに乗り込んでいるようで、何か思いつめたような表情を浮かべている。


「アイリ、ハリソンの奴どうかしたのか?」


「それが、今朝から様子がおかしいんです。朝食を取って、一足先にこのバスの様子を見に行くまではいつも通りだったのですが、私がココに来た時には今の様子でした」


「……ってことはその短時間で何かあったのかな」


 とりあえず、様子のおかしいハリソンを気に掛けつつも目の前の職人達を収容し、ヒノモトへ連れ帰るのが優先だ。それが終わってから話を聞いてみよう。
 約五十人の職人と俺達を乗せたバスは走り出す。職人達はこのバスに対して非常に強い好奇心を持ち、椅子一つ、窓一つ、カーテン一つに至るまで全てを目で見て、手で触れ、確かめていた。俺が席に着こうものなら、これは何だあれは何だと聞いてくる有様で逃げるように前の席へ移り、その左右前後をアイリ達で固めた。
 ヒルからヒノモトへ向かうためにはまずこの山を下る必要がある。馬車の滑落の危険性もあることから、道が細かったりカーブがきつい所には時折ロープが張られている。
 そして、登りとは違い下りのバスは一度スピードが乗るとブレーキが利きづらい。また舗装されていないため危ない箇所も少なくなった。そして、それでもハリソンならなんとかしてくれるだろうと思っていた。馬車の運転の経験はあるし、元々慎重な男だという俺の認識もあったからだ。
 だからこそ、まさかバスの後輪が道から外れ車両後部が落ちそうになるだなんて思っていなかった。
 ガタンという音と強い振動、そして徐々に後ろに引っ張られるような感覚。
 直後には脳内に強い危険信号が駆け巡った。


「カオス!!}


 後輪が地に付いていないならば、地の方を後輪に付ければいい。
 崖を操り、無理やり脱輪状態から脱する。


「……ハリソン」


「すみません! カズキ様!!」


「話は後で聞く」


 先ほどの衝撃は車内をちょっとしたパニックにするには十分だった。
 今のは何だったんだ。この車は安全じゃないのか。俺達を殺す気か。
 そういった非難の声が向けられる。


「調子が悪そうなお前にそのまま運転をさせようとした俺が間違いだった。寝不足だったのかもしれないし、気掛かりがあるのかもしれないけど、とりあえず気持ちを落ち着けろ」


「……すみません」


 この場には水城はおらず、運転を代われるのは俺ぐらいか。
 たぶん、今のは内輪差による脱輪だろう。馬車の間隔で言えば大丈夫だったのかもしれないが、バスは長いためこの差が大きく出た。たぶんそれが原因だろう。
 カーブがきついようなら魔術でカーブを緩くするようにすればいい。俺は運転技術でどうこうせず、足りない所は魔術で補うしかない。それで安全走行ができるならそれに越したことはない。
 それよりも深刻なのはハリソンだ。一体何があったんだろうか。

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