異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第22節

 上位能力のようなものに目覚めた俺。
 俺自身、突然の目覚めに困惑しながらも状況をこの場にいる全員に説明した。
 この件で俺の次に戸惑いを見せたのは水樹だった。
 水樹が今課されている仕事は俺の能力についてと向こうの世界の調査だ。そこに俺の上位能力の発現が加わり、想定外の状況となってしまっている。
 この件に関しては自分の手に負えないと言って、一度アマテラスに戻る始末だ。
 そしてこの場に残ったのは俺、ポーちゃん、クロちゃんの三人。


「えーっと……とりあえず、向こうの世界にクロちゃんが行けないことは分かったよね?」


 話を整理し、元々の話題に無理矢理戻す。


「え、ええ。そうですね……」


 クロちゃんの様子もさっきとは打って変わってしまっている。
 そうこうしている間にも、ヒル発ヒノモト行のバスが出る頃合だ。
 水樹もおらず、ハリソンだけでバスの運転というのはさすがに昨日の今日では不安が残る。


「悪い。そろそろ約束の時間だから、向こうの世界に行かなきゃ行けないんだ。折角ここまで来てもらってお茶を出す暇もなくてごめん」


「い、いえ。突然お邪魔したのはこちらからですから」


「もし、どうしても俺の手伝いをしたいんだって言うならポーちゃんと同じように俺の仕事の一部を手伝ってもらえたら助かるかな。興味があったらポーちゃんに聞いてみて。ポーちゃんも悪いけど、俺は向こうに行くからクロちゃんの事頼めるから」


「はい。では、この方をあの倉庫にお連れしても?」


「ああ、それは構わないよ」


 俺は二人に頭を下げながらI.Gに手を掛け、あの白い部屋を思い描いて渡る。






 白い部屋には二つの時計と無数の窓。
 そういえば、時計のボタンの一つに止というボタンがあったな。
 試しに異世界側の時計の止ボタンを押してみると、時計の針は止まり、窓から覗く世界は静止した。その状態で窓に手を掛け、異世界に渡ろうとするが渡れない。見えない壁に阻まれたかのように渡れない。
 どうやら、時計が止まった状態では世界を渡ることはできないらしい。
 だとするならば、異世界の物資を現代に送るためにはどうしても両方の世界の時の流れは止めてはいけないようだ。
 まだまだ色々と検証が必要そうだが、そう時間はかけられない。
 まぁ本当に調べようと思えば両方の世界の時間を停止させればいい話なのだが、俺自身としても早く職人をヒノモトに送りたいという気持ちがあるため検証は後回しである。
 異世界の時間の流れを戻し、異世界に渡る。
 そういえば、この部屋は何と呼べばいいだろうか。
 白い部屋。無数にある窓。時計の部屋。
 とりあえず、クロックルームと呼ぶことにしよう。

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