異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第21節

 部屋は壁、床、天井の全てが雪のように白く、壁が部分的に切り取られたように黒い。ちょうどA4やA3サイズ、中にはA2サイズの物もある。
 俺達が出て来た箇所も黒く切り取られている。よく見ればその黒の、窓のような部分からは新居となった俺の部屋が見える。
 どうやら、この窓はI.Gの役割をしているらしい。
 他の窓を見てみるとその一つ一つが現代と異世界のどちらかに繋がっているようだ。


「ニーサン。ここは一体どこなんですか? ここが異世界ですか?」


「いや、違う」


 部屋を見渡すと窓以外に気になるものがあった。
 壁掛け時計が二つだ。
 二つの時計は全く同じ時を刻んでおり、一秒の狂いもない。
 俺の持っている時計と時刻はぴったり同じであり、あれが現代の時間を指していることは分かる。正確に言えば、現代の日本の時刻だ。
 では、時計が二つあり、二つとも現代の時刻を指しているのだろうか? 推測ではもう片方は異世界の時間を指しているのではなかろうか。


 壁掛時計を手に取り、背面を見るといくつかのスイッチがある。年、月、日、時、分、秒、止の七つのボタンだ。
 試しに分のボタンを一度押してみる。時計に表示された時刻も一分進んでいる。そして現代に繋がっている窓から見える光景が少しだけ変わった。
 それが現代の時間を進めるボタンだという事は分かった。では戻すボタンはないかと調べてみたが無かった。どうやらこの時計は進めることはできても戻せはしないらしい。
 もう片方の時計を手に取り、背面を見ると全く同じ構造だ。
 分のボタンを押すと異世界に通じる窓から見える景色が少しだけ変わる。


「ニーサン。何かわかりましたか?」


「……たぶん、ここは現代と異世界の狭間の空間なんだと思う」


 狭間というのは便宜上にいい方で、どちらにも属していないという意味で言えば何でもいい。


「狭間の空間?」


「悪いけど、俺もこの空間に来るのは初めてなんだ」


 I.Gによるものだから俺の能力に関わるものだろうけど、何が何だか分からない。
 ただ、この空間はとても便利な空間だというのはわかる。
 今まではAというゲートに対しA'のゲートにしか飛べなかった。しかし、この空間を経由すればAからC'やD'にも飛べる。いや、AからBにだって飛べる。現代から現代、異世界から異世界に飛べる。しかもこの空間にクロが来れている。
 クロの手を握って異世界の窓に手をかけ、渡ろうとした。
 ――しかし、クロは異世界側には来れなかった。
 そして、現代側への窓は通ることができた。
 どうやら、元居た世界にしか移動できないらしい。


「一樹! 大丈夫!?」


 現代に戻ると血相を変えた水樹が俺とクロに駆け寄ってきた。


「ああ。ちょっと混乱する事態になってね」


「もしかして、クロちゃんも向こうの世界に行けたの?」


「いや、それともちょっとニュアンスが違う。俺の中での整理がつくまで待ってくれ」


 何がきっかけであの空間が生まれたかは分からない。だが、今はあの空間を意識するだけで繋がる。
 切っ掛けはクロちゃんを向こうの世界に連れて行こうとしたからだ。今までならクロちゃんはゲートを潜れず、俺だけが向こうに行っていたはずだ。
 能力者の能力が突然レベルアップした。これがもしかして上位能力なんだろうか?
 あの空間ではある意味、空間を好きに移動でき、好きに時間も進められる。そして止のボタンは多分、世界の時間を止められる。


 俺は神に等しい力を手に入れたのか?

「異能力で異世界充実 ―非現実の扉―」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く