異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第20節

 朝。
 ポーちゃんは新しいキッチンで朝食を作ってくれたので、それを堪能し、食後のお茶を楽しみながら雑談をしている所に訪問客。きっと水城だろうと出てみると、予想通り水城がいた。そして予想外にクロちゃんがいた。
 いつもの制服姿ではない私服のクロちゃんはお淑やかなお嬢様と言った風体であり、可愛い七割、綺麗三割といった感じ。


「あれ? クロちゃん?」


「お久しぶりです。ニーサン」


 あ、なんかその呼び方は久しぶりだな。
 曜日感覚がかなり失われつつ俺の中で必死に今日が何曜日であるかの記憶を手繰り寄せ、日曜日であることを思い出す。


「久しぶり……えーっと、とりあえず上がる? お茶ぐらい出すけど」


「すみません。突然お邪魔して」


「ああ、それはいいんだけど」


 とりあえず二人を招き入れる。新居であるため広さは前のワンルームよりも広く、二人増えた所でそこまで狭さは感じない。


「ニーサン? この靴は?」


 クロが指差したのは小さな女性ものの靴。


「それ? ヘラの仲間にシルヴィって人がいたでしょ? その人、今は一樹と一緒に住んでるの。だからその靴はその人の」


「それ、どういうことですか?」


 問い詰める矛先は俺に向いていた。


「いやぁ……」


 別に隠し立てするつもりも、こちらに非があるわけでも、疾しい気持ちも一切ない。にも拘らず、こうして問い詰められると萎縮してしまう。年下の女の子相手にだ。


「お客さんは水城さんと黒崎さんだったんですね」


 そういってひょっこり顔を出すポーちゃん。


「黒崎ってもしかして、クロちゃんの本名?」


「ええ、そうですけど。そ・れ・よ・り! シルヴィさんがどうしてニーサンと同居しているでしょう?」


 状況は刻一刻と、主に俺とクロの間で不穏さが増していく。これ以上の混乱を避けるため、皆でテーブルに付いて順を追って説明する。


「――とまぁそういうこと。アマテラスの命令の下、俺の管理下についてるってこと。ついでに俺の仕事とかも手伝ってもらっているんだ」


「……アマテラスらしい合理的な判断ですね」


 クロは一応の理解は示してくれた。しかし、納得まではしていないらしい。


「……ニーサンのそのお仕事って私も手伝ったりできないでしょうか?」


「クロちゃんが俺の仕事を?」


「はい。元々、今日ここに来たのはあの時助けてもらった恩返しができないかと思ったからで」


「あの時?」


「私が攫われて、ニーサンが助けに来てくれたことです」


「ああ……」


 実に義理深い事である。感涙すら覚える。


「そこまでしてもらわなくてもいいいんだけど――」


 いや、クロちゃんの能力は倉庫の整理といった分野では非常に魅力的な能力だ。これが単純な能力者との労働契約ならば、すぐさま契約したいくらいにだ。
 俺を躊躇させるのはクロちゃんが真っ直ぐに俺を見据えて恩返しと言っており、クロちゃんを単なる労働者と見れないという気掛かりがある故だ。


「どうかしましたか?」


「いや……」


「私も水城さんみたいに向こうの世界に行けたら何かお手伝いができると思うんですけど……」


「それはできないんだよな。俺の能力の制限で俺以外の生物は向こうとこちらを行き来できないって事になってる」


「……試してみてもいいですか?」


「まぁ試すぐらいならいいけど」


 この部屋にも何枚かI.Gとなっているイラストを何枚か貼っており、いつでも向こうの世界に行くことはできる。
 俺はクロちゃんの手を取って俺が先に、その後をクロちゃんが追う。
 そこで俺はちょっとした違和感を覚えた。
 向こうの世界とこちらの世界では少しだけ気圧が違う。そのため、行き来をするときは体が張ったり、痒みを覚えたり、耳鳴りがしたりとちょっとした不調が生じる。だから、移動する時に何もないということはまずない。
 だが、クロと手を繋いだ状態でI.Gを潜っても何も不調を感じないという違和感を覚える。
 俺はその違和感の正体を探るため、その身をI.Gに埋める。






 俺は見知らぬ白い部屋に居た。

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