異能力で異世界充実 ―非現実の扉―

田所舎人

第19節

 農村、山村を巡り俺が新しい領主だと名乗った。
 初めこそ信じてもらえなかったが、文書を見せるとなんとか信じてもらえた。そして、各村で物資を現金払いで調達させてもらい、その都度全てを現代の倉庫送りにする。
 アイエフが倉庫内のクレーンやリフターが使えるので、きっと荷運びをしているだろう。
 しかし、そうこうしていると俺の手元の金も尽きてきた。
 職人を長期的に雇い、大量の魔石を買い集め、資源まで手を伸ばせば当然と言えば当然か。
 そうすると再び金策に走らなければならない。
 領地経営が波の乗れば税収で賄う所だが……いや、今でもある程度は税収が蓄えられているのでは?
 俺の領地にはオセロ子爵のように男爵や子爵といった小規模の雇われ管理人のような立場の人間がいくらかいる。そんな彼らから税を払ってもらうのはある程度の筋が通っているのではなかろうか。
 その考えは間違っていないような気がし、挨拶がてら税の回収に回ることにした。
 さすがに全部は回りきれないため、経済規模の大きそうな街を回る。
 訪れた街の子爵はやはり俺の顔を知っているようで、歓迎してくれた。中には何を考えているのか分からないような輩もいたが、そういう膿を取り払うのは後回しだ。
 そうこうするうちに日も暮れ、俺と水城は現代に戻ることにした。


 水城には好きな所に帰っていいと言ったが、もう少し俺に付き合うと言って俺と一緒に倉庫にやってきた。


「黒の剣士さん、ずいぶん色々と買われたみたいですね」


 倉庫の四分の一が埋まるほどの木材が積み上げられていた。


「まぁ色々とね。ところで、ポーちゃんは?」


「ポーちゃんなら、今は休憩中ですよ。さすがに私一人では手が回らないので、彼女にも手伝ってもらったんですが慣れない作業で疲れたみたいです」


「そうだったのか」


「はい。それと宝石売却の件ですが、これだけの金額になりました」


 アイエフは簡単な報告書を寄越してきたのでさっと目を通した。何の宝石がいくらで売れたという明細だが、そこを飛ばし合計金額だけに注目した。
 九桁の数字が並んでいる。
 金銭感覚が狂いそうだ。


「一度に放出すると市場が混乱するため、相場の半額程度の価格でアマテラスが購入しています。今度はそれをアマテラスが市場の相場が崩れない程度の規模で放出するそうです」


「半額でコレなのか?」


「はい。一部には高価すぎたり、査定不能な物もありましたので、そちらはアマテラス預かりとなっています」


「そっか」


 現実味のないその明細に書かれた数字を何度も見るが実感は未だに湧かない。


「一樹、あの宝石売っちゃったの?」


「ああ……」


「それ、見てもいい?」


「まぁいいけど」


 俺はその明細を水城に渡した。
 水城はどれどれーと口にしながら目を通す。すると、明細と俺の顔を交互に見比べ、最後にアイエフの顔を見る。そしてアイエフは何も言わずに首を縦に振った。


「一樹、これ何に使うの?」


「とりあえず、お城でも建ててみるか?」


「向こうで建ててるじゃん……」


「そうでした……」


 これだけの額があれば現代の城であるマンションだって建てられない事は無い。


「それと、依頼されていた物品も買い揃えておきました」


「お、本当か?」


「はい。手頃な物は近くの電気店で。大きなものですともう少しかかりますが」


「いいよ。それで何が手に入ったんだ?」


「まずは発電機とバッテリー、インバーター等の電気周りですね」


 そう。俺はこれが欲しかった。
 現代の家電を使うと思えば全て俺の家から電源を引っ張ってこなければならなかった。それを解決するためには向こうで発電、蓄電、変換する必要がある。
 そして、魔宝石の中には回転するだけの魔宝石と言った発電するためにあるような魔宝石もある。それを組み合わせれば現代を経由することなく向こうで家電が使えるのではという構想があったのだ。
 幸いな事に俺に電気の知識は無いが、アイエフはそこらへんに詳しかったため使い方まで教えてもらった。
 そして、アイエフから一通り教えてもらい、ポーちゃんと合流し、水城と別れ、新居にポーちゃんと帰宅し、その日を終えた。

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